ベトナムがハーグ条約(アポスティーユ条約)に加盟し、2026年9月11日から効力が生じます。
これにより、ベトナムへ提出する日本の公文書について、外務省のアポスティーユを付けることが可能になります。アポスティーユを取得すると日本にある大使館・領事館の領事認証があるものと同等のものとして、提出先国で使用することができます。
これまでは投資ライセンスや労働許可証などの申請において、日本で作成または取得した文書をベトナムで提出する際には、外務省の公印確認や大使館・領事館による領事認証が必要でしたが、発効後は取扱いが異なる可能性があります。
本記事では、アポスティーユ制度と従来の領事認証、発効直後の留意点を紹介します
外務省の公印確認とアポスティーユ
日本外務省の「公印確認・アポスティーユとは」によると、公印確認およびアポスティーユはいずれも、日本の官公署や自治体等が発行する公文書に対して外務省が行う証明です。外国で婚姻・出生・査証申請・会社設立などの手続きのために日本の公文書を提出する際、提出先機関または当該国の大使館・領事館から外務省の証明を求められた場合に取得します。
公印確認は、日本にある外国の大使館・領事館による領事認証を受ける前提として必要となる証明で、公文書上に押印された公印について外務省が証明を行うものとされています。外務省で公印確認を受けた後は、当該国の大使館・領事館の領事認証を受けて提出先機関へ提出する手続きとなります。
アポスティーユは「外国公文書の認証を不要とする条約」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明であり、条約締約国向けに使用される証明です。
日本の公文書を外国で使用する際の手続きは、提出先国がハーグ条約締約国かどうかにより区別されます。
提出先国がハーグ条約締約国の場合
- 外務省でアポスティーユを取得
→ 在日大使館・領事館の領事認証を受けたものと同等として使用
提出先国がハーグ条約非締約国の場合
- 外務省の公印確認を取得
- 在日大使館・領事館の領事認証を取得
ベトナムのアポスティーユ条約加盟
条約の概要と対象書類
ベトナム司法省の2026年1月16日付記事によると、オランダ王国外務省は2026年1月13日、ベトナムが2025年12月31日に「外国公文書の認証を不要とする1961年ハーグ条約(アポスティーユ条約)」への加盟文書を提出したと正式に通知しました。ベトナムは2013年から国際私法に関するハーグ会議(HCCH)の加盟国であり、今回の加盟は同会議の活動および国際統合への参加をより深める節目と位置付けられています。加盟により、条約の加盟国数は129か国となりました。
同条約は15条で構成され、加盟国の公文書が他の加盟国の領域で流通・使用されることを容易にすることを目的としています。従来必要であった、発行国での領事証明と受入国での領事合法化という複数段階の手続きを、発行国で付与されるアポスティーユにより代替する仕組みです。
条約第1条に基づく公文書の範囲は次のとおりです。
- 国家の権限ある機関(司法機関を含む)が作成した文書
- 行政文書
- 公証文書
- 個人として署名された文書に対する署名認証および公式証明
一方、外交官または領事官が作成した文書、および商業・税関活動に直接関連する行政文書は対象外とされています。特に商業・税関関連文書については、条約交渉国(主に欧州諸国)が当該文書の合法化を求めていない、または提示手続を簡素化していたため、条約の適用範囲から除外されたと説明されています。また、一部の締約国では、輸出入許可証、原産地証明、安全・衛生証明など国際商取引で重要な行政文書に条約を適用している例があります。
証明手続きについて、対象文書はアポスティーユの付与のみで認証されます。この証明は署名、署名者の資格および押印の真正性を確認するものであり、文書の内容は証明の対象ではありません。証明書式は条約付属書で統一され、紙または電子形式(e-Apostille)で発行できます。また、各加盟国は1つ以上の発行権限機関を指定する義務があります。
発効時期とベトナムの指定機関
条約第12条第2項に基づき、通知受領日から6か月以内(2026年7月13日まで)に加盟への異議が提出されなかった加盟国との間で効力が生じます。さらに同条第3項により、異議のない加盟国との関係では2026年9月11日から効力が発生します。
ベトナムはアポスティーユ発行権限機関として外務省を指定しており、担当機関は以下のとおりです。
- ハノイ:領事局
- ホーチミン市:市外務局
加盟による期待効果
加盟は行政改革、デジタル化および国際統合の推進方針に沿うものとされています。外国公文書の使用手続きに大きな変化をもたらし、国際法的関係における地位・信頼性の向上、国際機関の勧告への対応、ビジネス環境指数の改善、国家競争力の向上、外部資源の誘致への寄与が期待されています。
また、ベトナムの公文書の海外利用も容易になり、時間・費用の削減につながるほか、海外在住ベトナム人およびベトナム在住外国人の学習・就労・生活を支援するとされています。今後、関係機関は必要な法的枠組みの整備と実施準備を進め、条約を効果的に運用する方針です。
発効直後の注意点
丸の内公証役場の2026年1月19日付記事によれば、ベトナムの条約発効(2026年9月11日)以降、同国へ提出する私署証書について日本外務省のアポスティーユを付けることが可能になるとされています。一方、発効直後は書類提出先機関等の認識により取扱いに混乱が生じる可能性があるため、認証依頼の前に次の点を確認することが推奨されています。
① アポスティーユのみで受理されるか
アポスティーユ付き書類で受け入れ可能かを確認します。
② 領事認証が必要か
従来どおりの大使館・領事館による領事認証を求められるかを確認します。
③ 領事認証が必要な場合の手続き方法
領事認証が必要とされた場合には、
・大使館が認証に対応しているか
・外務省の公印確認を付けて持ち込めばよいか
を確認します。
また、認証取得後の差し替えには対応できないため、事前確認が必要とされています。
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※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

