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【2025年11月更新】2026年1月からの新政令発行、ベトナムの最低賃金引き上げ時期の最新動向

カレンダーと上昇矢印、ベトナム地図とコインのイラスト

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ベトナムで事業を行う企業にとって、最低賃金の動向は、現地従業員の給与水準を決定するための重要な指標の一つです。

本記事では、2011年に外資・内資の最低賃金制度が統一されて以降の改定履歴を時系列で整理し、政策の変遷を振り返っています。

あわせて、2025年7月に国家賃金評議会で合意された「2026年1月からの7.2%引き上げ案」が新政令として発行されるまでの、11月時点の最新動向をニュースをもとにご紹介しています。

最低賃金制度の推移を理解し、今後の動向を見通す上での参考としてご活用いただけますと幸いです。

目次

2011年〜2012年:年2回引き上げ、外資・内資の統一、10月改定

2011年は1月の最低賃金引き上げの後、10月に外資および内資企業の最低賃金が統一され、さらに引き上げが行われました。その後、2012年中は最低賃金が維持され、次の引き上げは2013年1月となりました。

(日本語仮訳)

2011年10月1日から2012年12月31日までの期間、会社、企業、協同組合、農場、家族経営、個人、その他労働者を雇用する機関や組織で働く労働者に対して、地域別最低賃金として月額140万ドンから200万ドンが適用されます。

10月1日から、地域別最低賃金が月額140万ドン~200万ドンに引き上げ |ベトナム電子政府新聞 – 2011年8月23日

2011年は物価の高騰により、最低賃金の引き上げが年に2回実施されました。

(日本語仮訳)

VnEconomyとのやり取りの中で、ファム・ミン・ファン労働・傷病兵・社会問題省副大臣は次のように述べました。

物価の高騰により労働者の生活が非常に厳しい状況にあり、現行の賃金では生活を維持するのが困難なため、政府は労働・傷病兵・社会問題省の予定したスケジュールに先立って最低賃金引き上げの提案を承認しました。」

これは2011年における2回目の最低賃金の引き上げであり、この水準は2012年12月31日まで適用されます。したがって、通常通りであれば行われるはずだった2012年1月1日の最低賃金改定は実施されません

最低賃金、10月1日から最高で200万ドンに引き上げ。|VnEconomy紙 – 2011年8月23日

2013年〜2020年:毎年1月1日の定期改定

この期間は安定して「1月1日改定」が続いた時期です。毎年、国家賃金評議会が前年に会合を開いて政府へ提案、それをもとに政府が12月末までに政令を公布し、1月1日から新しい最低賃金が適用されます。この方式は企業にとっても年次予算計画と整合が取りやすい面があります。

2020年〜2024年:コロナ禍と制度の揺れ

2020年:1月改定

2020年は例年通り、1月1日に最低賃金が引き上げられました。この時点ではまだ新型コロナウイルスの影響が顕在化しておらず、前年に協議された通りのスケジュールで進行しました。

2021年:据え置き

2021年はコロナ禍の影響で、企業の経済的負担を軽減するため、最低賃金は据え置きとなりました。

(日本語仮訳)

国家賃金評議会は、2021年の最低賃金を据え置くという勧告を行った根拠として、新型コロナウイルス感染症の国内外での流行が、国内の経済・社会全体に深刻な悪影響を与えていること、またその影響の程度を2021年について具体的に予測することが困難であることを挙げています。

最低賃金は過去何%上昇してきたのか?|VnEconomy紙 – 2020年11月4日

2022年:2年半ぶり、異例の「7月改定」

2021年に引き続き経済が不安定だったものの、労働者の生活水準保護のため、最低賃金が2022年7月1日から引き上げられました(政令第38/2022/ND-CP号)。これにより、異例の「7月改定」が実施されました。

(日本語仮訳)

これは、全国の労働者にとって朗報となるニュースであり、6月12日午前に開催されたファム・ミン・チン首相と労働者との対話の場で発表されました。

労働・傷病兵・社会問題省が政府に提出した文書では、一部の企業が「新型コロナからの回復のため、最低賃金引き上げの時期を2023年1月1日まで延期してほしい」と要望したことに対し、それを退ける立場を示しました。

同省は、「2022年7月1日からの最低賃金引き上げは極めて重要であり、国が労働者の生活を守るためにタイムリーかつ真剣に対応している証である。特に、新型コロナウイルスの影響を2年以上受け続けてきた状況を踏まえたものである」と述べています。

なお、今回の引き上げ幅は6%と大きくはなく、最低生活費を補う程度にとどまり、若干の改善にすぎません。また、多くの企業がすでにこの水準を上回る給与を支払っているため、企業の支払い能力には大きな影響を与えないとされています。

2022年7月1日から労働者の地域別最低賃金が6%引き上げへ|ベトナム労働・傷病兵・社会問題省公式サイト-2022年6月13日

2023年:再び据え置き

2022年の7月改定からわずか半年しか経っていないこともあり、2023年1月は改定なし。年内も引き上げは実施されず、在ベトナム日本商工会議所(JCCI)は、人件費の急激な上昇が企業活動に与える影響を懸念し、現状維持を求める意見書を政府に提出しています。同年末には次回改定に向けた交渉が再開しました。

(日本語仮訳)
在ベトナム日本商工会議所(JCCI)は、2024年の地域別最低賃金の調整に関連して、首相および関係省庁に文書を提出した。

JCCIが実施した「海外に投資する日本企業の現状」に関する調査(600社以上が対象)によると、46%以上の企業が2023年の売上を「減少」または「横ばい」と予測している。

特に人件費に関しては、75%以上の日本企業が「人件費の上昇は今後の投資における最大のリスク」と回答している。

JCCIによれば、ベトナムに投資している日本企業の給与引き上げ実績は以下の通り:

  • 2020年から2021年:5.4%の引き上げ
  • 2021年から2022年:5.8%の引き上げ
  • 2022年から2023年:5.9%の引き上げ予定

これらの上昇率は、タイ・インドネシア・フィリピンなどの他のASEAN諸国よりも高い

2022年に実際に賃上げを実施した企業数では、全体の96%が2022年~2023年の期間に給与を引き上げた

その結果、日本の製造業企業の平均給与(北部ベトナム・地域1~4の合算)は510万VND超となり、地域1の最低賃金水準(468万VND)を大きく上回っている

このため、JCCIは2023年の地域別最低賃金水準は維持すべきとの意見を提出した。
ただし、2024年1月からの最低賃金引き上げについては反対しないが、その引き上げ幅には配慮が必要だとも述べている。

企業は最低賃金の引き上げに反対しないが、引き上げ幅には注意が必要|ザンチー紙 – 2023年8月25日

2024年:2年ぶりの引き上げ、再び7月改定

2024年は、7月1日付で6%の引き上げが行われました(政令第74/2024/ND-CP号)。政令は2024年6月30日に公布され、翌日の2024年7月1日に施行されました。

(日本語仮訳)
労働・傷病兵・社会問題省によれば、地域別最低賃金はこの2年間据え置かれてきました。国家賃金評議会の技術部門による計算によると、2024年の消費者物価指数(CPI)の上昇率が約4.5%と見込まれる中、現在の最低賃金水準では2024年時点において労働者およびその家族の最低生活水準を維持できないとしています。

さらに、2022年と比較して、経済・社会的要因や労働市場、企業の支払い能力などがより良い方向に変化しています。たとえば、マクロ経済は引き続き安定しており、2023年の経済成長率(GDP)は5.05%、2024年第1四半期は前年同期比で5.66%の成長が見込まれています。

労働市場は回復の勢いを保っており、企業の生産・事業活動も良好な傾向を示しています。労働者の賃金や所得も安定して増加しており、四半期ごとに上昇しています。

また、7月1日から公務員など公共部門の給与も引き上げられることから、労使関係が存在する民間部門の労働者の最低賃金を調整しなければ、両者のバランスが崩れ、不公平感を生じさせる可能性があります。

これらを踏まえ、労働・傷病兵・社会問題省は、労働者の最低生活水準を守るために、地域別最低賃金の引き上げが非常に必要であると述べています。

2024年7月1日からの地域別最低賃金引き上げの新たなポイント|ベトナム政府電子新聞「政策・法律構築フォーラム」- 2024年6月28日

次回引き上げ案の動向

2026年1月改定 vs 2025年7月改定

Lao Dong紙の2025年5月30日付記事によると、国家賃金評議会の元議長であるファム・ミン・フアン氏は、地域別最低賃金の改定時期について、2026年1月1日からが妥当であるとの見解を示していました。

(日本語仮訳)
「労働者は皆賃上げを望んでいますが、利益のバランスを取ることが必要であり、特に労働集約型企業や中小企業への影響を慎重に検討するべきです。もし状況に大きな変動がなければ、賃金を引き上げることは可能ですが、その調整時期としては2026年1月1日からが妥当です」

地域別最低賃金の引き上げ時期を慎重に検討|Lao Dong紙 – 2025年5月30日

この発言は、企業側の予算計画との整合性や経済の安定性を重視する立場からなされたもので、同紙の見出しも「地域別最低賃金の引き上げ時期を慎重に検討」と題されています。

一方で、VnEconomy紙の2025年6月18日付記事によると、ベトナム労働総同盟の副議長であるタイ・トゥ・スオン氏2025年7月からの前倒し引き上げを提案していました。

(日本語仮訳)
2023年以降、電気料金は4回にわたり合計17%値上げされましたが、その間、労働者の地域別最低賃金の引き上げは1回のみ、6%にとどまりました。そのため、多くの労働者が日々の支出さえままならず、貯金や将来への投資をする余裕はありません。

社会にとって必要不可欠な物質的価値を直接生み出している労働者であるにもかかわらず、彼らへの関心は十分とは言えません。労働者は狭く粗末な宿舎に住み、設備も不十分な中で、日々の生活費をやりくりして苦しい暮らしをしています」と、タイ・トゥ・スオン議員は懸念を示しました。

2025年7月から地域別最低賃金を引き上げるよう提案、労働者の生活確保のために|VnEconomy紙 – 2025年6月18日

第1回会合 – 6月:2026年1月改定案へ

2025年6月26日、国家賃金評議会は、次回の地域別最低賃金改定に向けた第1回会合を開催しました。Nguoi Lao Dong紙の2025年6月26日付記事によると、同評議会は、内務省、ベトナム労働総同盟(労働者側)、ベトナム商工会議所(使用者側)、および労働・賃金・経済社会分野の専門家で構成され、現在のメンバーは以下の通りです。

議長:内務副大臣 グエン・マイン・クオン氏
副議長
 ・ベトナム労働総同盟 副議長 ゴ・ズイ・ヒエウ氏
 ・ベトナム商工会議所 副会頭 ホアン・クアン・フォン氏
 ・ベトナム協同組合連盟 副会長 ディン・ホン・タイ氏

このほか、内務省から4名、労働総同盟から4名、使用者側から3名、独立した専門家2名が加わる計17名体制で構成されています。

Nguoi Lao Dong紙の2025年6月26日付記事6月27日付記事によると、この会合では労働側・使用者側の双方が「2026年1月1日からの適用」で一致しましたが、引き上げ率をめぐっては大きな隔たりがあり、合意には至りませんでした。例年通りであれば2〜3回の協議を経て最終決定される見通しです。

労働者側の提案(ベトナム労働総同盟)

ベトナム労働総同盟は、2025年3〜4月に全国10省市・約3,000人の労働者を対象に実施した生活実態調査の結果をもとに、以下の2つの引き上げ案を提示しました。

  • 案1:9.2%の引き上げ(月額32万~45万ドン増)
  • 案2:8.3%の引き上げ(月額29万~41万ドン増)

いずれの案も、適用時期は2026年1月1日を想定しています。ただし、ベトナム労働総同盟のゴ・ズイ・ヒエウ副議長は、「労働者の共通の願いとしては、より早期の引き上げを望んでいる」とも述べています。

ベトナム労働総同盟の調査によると、多くの労働者が厳しい生活状況に直面しています。

まず、収入と支出のバランスについては、

  • 54.9%の労働者が「収入が家族の基本的な支出にちょうど足りる」と回答しました。
  • 一方で、7.9%は「生活費が足りず、副業が必要」と答えています。
  • また、12.5%が「毎月借金している」、29.9%が「数か月に一度は借金が必要」としています。

栄養や教育・医療に関する負担も大きく、

  • 肉や魚を日常的に十分に摂れている労働者は全体の約55.5%にとどまり、健康や仕事のパフォーマンスへの影響が懸念されています。
  • 教育費については、53.3%が「子どもの教育費の半分以上をまかなえていない」と答えています。

将来設計にも影響が及んでおり、

  • 未婚の労働者の72.6%が「収入の不安が結婚をためらう理由になっている」と答え、
  • 既婚の労働者の72.5%も「収入が理由で第2子以降の出産をためらっている」としています。

こうした状況に対し、ベトナム労働総同盟は「最低賃金の早期引き上げは極めて重要であり、喫緊の課題だ」と強調しています。あわせて、代表のニャック・ファン・リン氏は「2023年以降、電気料金は17%上昇しているのに対し、最低賃金の引き上げ率はわずか6%にとどまっている」と指摘し、「2025年のGDP成長率は8%と見込まれているが、賃上げがそれを下回るようでは、労働者は経済成長の成果を十分に享受できない」と問題を提起しています。

使用者側の提案(ベトナム商工会議所:VCCI)

一方、使用者側を代表するベトナム商工会議所のホアン・クアン・フォン副会頭は、「2026年1月1日からの適用」には同意しつつも、引き上げ率は3〜5%にとどめるべきだと主張しています。

引き上げ抑制の理由としては、以下の点を挙げています。

  • 企業が今後の経済環境に適応し、経営を立て直す余地を確保する必要があること
  • 「決議57」によって掲げられている労働生産性や技術革新の目標と矛盾しないようにすること
  • 2025年7月9日に終了予定のベトナム・米国間の貿易交渉の影響が読めないこと

フォン副会頭は、「今後の貿易協定の内容によっては、企業がさらなるコスト増に直面する可能性もあるため、現時点で大幅な賃上げを行うのは難しい」と説明しています。

また、国家賃金評議会の技術部門は、労使双方の主張の中間を取るかたちで、引き上げ率を6.5~7%とする案を提示しています。

第2回会合 – 7月:7.2%引き上げ案で合意

VnEconomy紙の2025年7月11日付記事によると、2025年7月11日、国家賃金評議会は第2回会合を開催し、2026年1月1日から地域別最低賃金を平均7.2%引き上げる案を政府に提案することで合意しました。この案は、出席した評議会メンバー16名のうち13名が賛成、3名が棄権する形で決定されています。

評議会議長を務める内務省副大臣グエン・マイン・クオン氏は、「この増加率は現状の経済発展段階に適しており、国家の持続的な成長を後押しする」と述べました。

改定後の月額最低賃金案(単位:VND)

今回提案された引き上げ案が政府に承認されれば、各地域の最低賃金は以下の通り改定されます。

地域区分現行
2024年7月〜
改定後
2026年1月〜
上昇額上昇率
第1地域4,960,0005,310,000350,0007.1%
第2地域4,410,0004,730,000320,0007.3%
第3地域3,860,0004,140,000280,0007.3%
第4地域3,450,0003,700,000250,0007.2%
平均4,170,0004,470,000300,0007.2%

労使双方のコメント

ベトナム労働総同盟のゴ・ズイ・ヒエウ副議長は、「今回の7.2%引き上げ案は、労働者の期待に応えるものであり、企業側の困難にも配慮した現実的な水準」と評価しています。同氏はまた、「この改定が労働者の生活の質向上につながることを期待している」と述べました。

一方、ベトナム商工会議所(VCCI)のホアン・クアン・フォン副会頭は、「7.2%という増加幅は企業にとって負担が大きいが、評議会の合意を尊重し、政府に対してこの案を推奨する」と表明しました。企業は人件費増加に対応するため、管理体制の見直しや生産性向上に取り組む必要があると指摘しています。

企業団体の意見 – 10月:7.2%案に慎重姿勢

繊維業界:「7.2%は過大、最大6.5%にとどめるべき」

VnEconomy紙の2025年10月6日付記事によると、ベトナム繊維協会(VITAS)は、最低賃金の引き上げと2026年1月1日からの適用時期には賛同しつつも、「7.2%という上昇率は現実的な支払能力を超えている」と指摘しました。

同協会によれば、繊維業界の企業のうち93.2%が中小企業であり、特に農村部や遠隔地に立地する新興企業では人件費上昇が新規雇用創出の妨げになるおそれがあります。さらに、業界全体の輸出の約40%を占めるアメリカ向け製品が、トランプ大統領による関税措置の影響を受けており、燃料費や物流費の高騰も重なって経営環境は一段と厳しくなっていると指摘しています。

こうした状況を踏まえ、ベトナム繊維協会(VITAS)は「最低賃金の引き上げ率を最大でも6.5%にとどめる」ことを提案しました。最低賃金の上昇に伴い、社会保険料や労働組合費などの負担も増加するため、実質的なコスト上昇を抑制する必要があるとしています。

中小企業団体:段階的な引き上げを提案

ベトナム中小企業協会は、急激なコスト増を避けるため、2026年の最低賃金改定を2段階で実施する案を提示しました。第1段階として2026年1月1日から5月30日までに平均4%の引き上げ、第2段階として6月1日から12月31日までに平均3.2%の引き上げを行うという内容です。この案により、労働者の生活改善を図りつつ、企業側が段階的に経営体制を調整できるとしています。

内務省:7.2%引き上げ案を維持

これらの意見に対し、内務省は7.2%引き上げ案を維持しました。内務省によれば、この水準は国家賃金評議会による勧告報告に基づいて策定されたものであり、ベトナム繊維協会およびベトナム中小企業協会も同評議会のメンバーとして、この調整率に関する勧告の採決に参加したと説明しています。

また、内務省によると、施行時期(2026年1月1日)についても、多くの国では企業が予算や人件費計画を立てやすいよう、会計年度の開始と同時期に合わせています。また、ベトナムでは2000年以降の最低賃金の調整18回のうち15回は1月1日に実施されており、1月以外の時期に改定されたケースはいずれも、特別な変動が生じた際の例外的な措置によるものだということです。

適用地域の区分調整 – 10月

現時点の政令案(2026年1月1日以降適用予定・単位:VND)

ベトナム電子政府新聞の2025年9月29日付記事によると、最低賃金の金額については、国家賃金評議会の引き上げ案に従って、現在の政令案は以下のようになっています。

地域区分月額最低賃金時間当たり最低賃金
第1地域5,310,00025,500
第2地域4,730,00022,700
第3地域4,140,00020,000
第4地域3,700,00017,800
平均4,470,00021,500

適用地域の区分については、政令第128/2025/ND-CP号の地域一覧を基本的に継承しつつ、行政単位の再編に伴い、各地方からの提案を踏まえて一部の地域で調整・更新が行われています。

内務省・クアンニン省人民委員会からの提案

ベトナム労働新聞の2025年10月8日付記事によると、現在全国の3,321地域は次のように区分されています。

  • 第1地域:439地域(全体の約13%、月額4,960,000VND)
  • 第2地域:428地域(全体の約13%、月額4,410,000VND)
  • 第3地域:806地域(全体の約24%、月額3,860,000VND)
  • 第4地域:1,648地域(全体の約50%、月額3,450,000VND)

内務省は政令案において、第1地域を39地域増やし、第2地域を16地域減らし、第3地域を8地域減らし、第4地域を15地域減らすことを提案しています。これにより、2026年1月1日以降、ハイフォン市では12坊(phường)・29社(xã)が第2地域から第1地域へ、14社(xã)が第3地域から第2地域へ引き上げられる見込みで、全国でも最も大きく変化する地域の一つとなります。

一方、クアンニン省人民委員会の副委員長は、次回以降の最低賃金改定では、以下のように地域区分を3段階に簡素化すべきと提案しました。

  • 第1地域:坊(phường)に適用
  • 第2地域:特区(đặc khu)に適用
  • 第3地域:社(xã)に適用

このように整理すれば、地域間の経済・社会発展水準との整合性が保たれ、毎年の昇格・降格見直しが不要となり、今後は国家賃金評議会が各地域の実情に応じて最低賃金の引き上げ率を検討・勧告する形で十分だとしています。

ホーチミン市労働総同盟からの提案

ベトナム労働新聞の2025年10月8日付記事によると、政令案では第1地域と第3地域との間に1,170,000ドン(約28.3%)という大きな賃金格差が生じる見込みです。過去(2013〜2017年)には、旧バリア=ブンタウ省内のフーミー町とチャウドゥック県の隣接地域において、地域間の最低賃金格差を理由とする労働争議が発生しており、政府が調整を行った後にようやく労使関係が安定したという経緯があります。

この経験を踏まえ、ホーチミン市労働総同盟は、第1地域と隣接する地域においては、地域格差が1段階以内に収まるように適用すべきだと提案しています。具体的には、第1地域と隣接する地域については第3地域から第2地域へと引き上げる必要があるとしています。

ベトナム労働新聞の2025年10月13日付記事によると、ホーチミン市人民委員会は、6つの社(xã)とコンダオ特区に対して、第3地域から第2地域へ最低賃金地域区分の調整を提案した文書を内務省に送付しました。コンダオ特区は、生活費の高さなど特殊事情を考慮し、第2地域の「特例区分」として提案されています。

政令第293/2025/ND-CP号の発行

ベトナム電子政府新聞の2025年11月11日付記事によると、政府を代表して副首相が2025年11月10日付で政令第293/2025/ND-CP号に署名し、労働契約に基づいて働く労働者に適用される最低賃金を規定しました。政令は2026年1月1日から施行されます。

最低賃金の金額は、政令案の通りで以下のようになっており、平均で7.2%の引き上げとなります。

地域区分月額最低賃金時間当たり最低賃金
第1地域5,310,00025,500
第2地域4,730,00022,700
第3地域4,140,00020,000
第4地域3,700,00017,800
平均4,470,00021,500
地域区分現行
2024年7月〜
改定後
2026年1月〜
上昇額上昇率
第1地域4,960,0005,310,000350,0007.1%
第2地域4,410,0004,730,000320,0007.3%
第3地域3,860,0004,140,000280,0007.3%
第4地域3,450,0003,700,000250,0007.2%
平均4,170,0004,470,000300,0007.2%

なお、本政令の全文および2026年1月1日以降に適用される地域区分の付属書は、以下のリンクから確認できます。

おわりに

ベトナムの地域別最低賃金は、2013年〜2020年までは1月改定が基本でしたが、2021年のコロナ禍以降は据え置きや7月改定の年が続いてきました。2025年7月には国家賃金評議会が2026年1月からの7.2%引き上げ案で合意し、その後10月時点では、企業団体の慎重な意見が示されつつも、内務省が当初案を維持する方針を確認しています。今後、政府による正式な政令公布を経て改定内容が確定する見込みです。公布後も引き続き、最新情報をお届けしてまいります。

ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※本記事は、公開時点の情報を参考に作成しており、今後変更となる可能性があります。また、具体的な運用は管轄機関によって異なる可能性があるため、実務上は事前にご確認をお願いいたします。

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