ベトナムでは、2025年7月1日より郡(huyện)や区(quận)といった中間レベル(以下、郡レベル)の行政区画が廃止されて地方政府が2層構造(「省・市レベル」と「コミューンレベル」)となり、全国の63省・市は34省・市となって新たな行政体制へ移行します。これに伴い、従来は郡単位で定められていた地域別最低賃金の適用方法についても見直しが行われ、政令第128/2025/ND-CP(2025年7月1日施行)により、その詳細が定められました。
本記事では、現在適用されている地域別最低賃金制度を定めた政令第74/2024/ND-CP号(2024年7月1日施行)と、行政区画再編に対応した政令第128/2025/ND-CP号を参照しながら、地域別最低賃金の概要および行政区画変更時の適用ルールについて整理します。

郡→ コミューンレベルへの区分転換
2025年6月11日に公布された政令第128/2025/ND-CP号は、国家行政体制の分権・再編を定めた法令であり、その中の第15条および付録I(Phụ lục I)において、地域別最低賃金の適用単位を郡レベルからコミューンレベルへ移行することが明記されています。施行日は2025年7月1日です。
地域別最低賃金に関わる主な変更内容
第15条第6項:政令第74/2024/ND-CP号の「付録」廃止
「政令第74/2024/ND-CP号の付録(旧・郡区分表)を廃止する」と規定
→ 地域区分の基準が郡レベルからコミューンレベルへ正式に切り替え
第15条第7項:新たな適用基準と経過措置の導入
- 2025年7月1日より、地域別最低賃金はコミューン単位で適用される
- コミューン適用後に地域別最低賃金が従来より低くなる場合は、旧郡区分に基づく水準を引き続き適用(政府による新たな指針が出るまで)
付録I(Phụ lục I):コミューン単位の新地域区分
- 全国34省市の各コミューンを第1〜4地域に分類
- 今後の地域別最低賃金の適用判断の正式な根拠として機能する新リスト
コミューン単位の新しい地域区分
今回の再編では、全国34の省・市を対象に、各コミューン単位(phường:坊、xã:コミューン)で地域別最低賃金の新たな地域区分が設定されました。各地域の旧名称と新名称の対応関係を簡易的に確認する際には、VnExpress紙の「全国の3,321の新しい phường と xã を検索」ページが便利です。地図上にカーソルを合わせると該当エリアの情報一覧が表示されるほか、検索窓に名称を入力して直接検索することも可能です。行政手続きや正式な所在地確認の場面では、公式情報の確認をお願いします。
この変更により、地域の生活水準や労働市場の実態に即した、より精緻な最低賃金の適用が可能になります。本記事ではすべての地域を網羅することはできませんが、参考として、再編後のホーチミン市における地域区分の一例をご紹介します。
▼ ホーチミン市(再編後)における新地域区分
| 地域区分 | 対象となるコミューン・坊 (xã/phường) | 月額最低賃金 (VND/月) |
|---|---|---|
| 第3地域 | Ngãi Giao、Bình Giã、Kim Long、Châu Đức、Xuân Sơn、Nghĩa Thành、Hòa Hiệp、Bình Châu、Hồ Tràm、Xuyên Mộc、Hòa Hội、Bàu Lâm、Phước Hải、Long Hải、Đất Đỏ、Long Điềnの各コミューン、および特別区Côn Đảo | 3,860,000 |
| 第2地域 | Bà Rịa、Long Hương、Tam Longの各坊、およびBình Khánh、An Thới Đông、Cần Giờ、Thạnh Anの各コミューン | 4,410,000 |
| 第1地域 | 上記以外のすべてのコミューン・坊 | 4,960,000 |
区分ごとの最低賃金額は据え置き
今回の政令第128/2025/ND-CP号では、地域別最低賃金の「金額」には変更がなく、各区分における現行水準が引き続き適用されます。金額の根拠は、これまでどおり政令第74/2024/ND-CP号に基づいています。
今回の見直しの最大のポイントは、地域区分の基準が「郡」から「コミューン」に変更された点です。この行政単位の再編に伴い、自社が属する区分が変更されている可能性があるため、所在地が現在どの区分に該当するかを確認する必要があります。
現行の地域別最低賃金の概要
政令第74/2024/ND-CP号(2024年7月1日施行)の第3条第1項では、地域を第1地域~第4地域の4区分に分け、それぞれに月額および時間額の最低賃金を次のように規定しています。
| 地域区分 | 月額最低賃金(VND/月) | 時間額最低賃金(VND/時間) |
| 第1地域 | 4,960,000 | 23,800 |
| 第2地域 | 4,410,000 | 21,200 |
| 第3地域 | 3,860,000 | 18,600 |
| 第4地域 | 3,450,000 | 16,600 |
この区分は、第3条第2項およびその付録に基づき、各地域の経済発展状況や生活費水準を考慮して定められています。一般的には、生活コストの高い都市部が第1地域に分類され、郊外や農村部にかけて第2〜4地域と段階的に区分される構成です。
ただし、政令第74/2024/ND-CP号の付録(旧・郡単位の地域リスト)は、政令第128/2025/ND-CP号第15条第6項により2025年7月1日をもって廃止され、その後は付録Iに定められたコミューン単位の新しい地域区分が最低賃金の適用根拠として用いられることになります。
地域区分の適用原則
企業(使用者)がどの地域の最低賃金を適用すべきかは、政令第74/2024/ND-CP号の第3条第3項(a)〜(c)において、以下のとおり規定されています。
企業が所在する地域の最低賃金を適用
企業が活動する地域に応じて、その地域が属する区分の最低賃金を適用します。
複数の地域に事業所・支社がある場合
各拠点が異なる地域に位置する場合、それぞれが所在する地域の最低賃金を適用します。
工業団地・輸出加工区が複数の地域にまたがる場合
対象となる地域が複数の最低賃金区分にまたがる場合は、最も高い水準の最低賃金を適用します。
行政区画変更時のルール
行政区画の名称変更や分割・合併などの再編が行われる場合については、政令第74/2024/ND-CP号の第3条第3項(d)・(đ)で以下のように規定しています。(第3条第3項(e)については、政令第128/2025/ND-CP号第15条第6項により廃止となります。)
名称変更・分割が行われた場合
行政区画の名称変更や分割などの再編があった際、政府が新たな規定を公布するまでの間は、暫定的に変更前の地域区分に基づく最低賃金水準を引き続き適用します。
新たな行政区画が誕生した場合
異なる最低賃金水準に属する一つまたは複数の地域をもとに新たに設置された行政区画については、構成区域のうち最も高い最低賃金水準を適用します。
おわりに
2025年7月からの行政区画および省市の再編に伴い、地域別最低賃金の適用区分が新たに見直されました。まずは、自社が所在するコミューンがどの地域区分に該当するのかを確認することが重要です。なお、最低賃金額の引き上げ時期に関する最新動向については、今後も随時お伝えしてまいります。
ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

