MENU

77%が給与より職場環境、Z世代増加で変わる求人票と採用対応

職場環境を重視する若年労働者と採用イメージ

ベトナムの労働市場では、給与水準よりも職場環境や精神的な安心感を重視する傾向が強まっています

調査では77%の労働者が、より健全で尊重された環境を得られるのであれば収入の減少も受け入れると回答しました。一方で、給与条件が高くても応募者が内定を辞退するケースが見られ、その理由として最も多かったのが仕事内容や条件の説明不足で55%に上りました。

近年はZ世代の増加により、求人票の内容の明確さ、採用対応の迅速さ、企業文化の透明性などが重視されるようになり、企業には従来とは異なる採用対応が求められています。

本記事では、労働者の価値観の変化と、それに伴い採用活動に求められている対応の変化を紹介します。

目次

労働者の価値観の変化と職場選択基準

77%が給与より職場環境を優先

VnExpress紙の2026年1月31日付記事によると、調査において労働者の77%が、健全で尊重され、生活とのバランスが取れた職場環境を得るためであれば収入を犠牲にすることを受け入れると回答しました。

この結果は、Coc Coc Researchが採用プラットフォームと共同で実施した「新しい状況下におけるベトナム労働市場レポート」によるもので、全国の1,000人以上の労働者および採用側を対象に調査が行われました。同レポートでは、労働市場の圧力が高まる中で、労働者は転職に対してより慎重になり、精神的健康を最優先する傾向が強まっているとしています。

調査によると、77%の労働者が収入を減らしてでもより健全な職場環境を望むと回答しており、特にZ世代でこの傾向が顕著でした。その内訳は以下の通りです。

  • 半数以上が約10%の減給を受け入れると回答
  • 25%はそれ以上の減給も受け入れると回答
  • 25%は収入を最優先、または現在の環境に満足と回答

この結果についてレポートは、企業文化や職場環境、精神的健康が、職業選択および長期定着の重要な基準になりつつあることを示していると指摘しています。

また、近年は特にZ世代を中心に、給与だけでなく企業文化や働く環境、精神的な安心感を重視する傾向が強まっているとされています。

「安定した仕事」の意味が変化

調査では、労働者が長く働き続けたいと考える要因についても分析が行われました。その結果、「安定した仕事」という概念が従来とは異なる意味で捉えられていることが明らかになりました。

安定とは、長期雇用や高収入を指すものではなく、仕事と私生活のバランスや持続可能な成長が可能であることを意味する傾向が強まっているとされています。

長期的に働き続けたい理由として挙げられた上位4項目の割合は以下の通りです。

  • 安定した仕事:47%
  • 職場環境・同僚・企業文化:46%
  • 仕事と生活のバランス:36%
  • 給与・賞与・福利厚生:36%

2026年において労働者が求める安定とは、まず財務面の安定であり、具体的には収入が明確であり、給与が期限どおり支払われることを指します。また、この安定には以下の要素も含まれるとされています。

  • 明確な業務目標
  • 心理的に安全な職場環境
  • 技能向上の機会(技術・人工知能の進展に遅れないため)

Z世代の増加により変化する採用

求人情報の透明性と採用プロセスの変化

VnExpress紙の2026年2月9日付記事によると、近年、企業の採用活動は若年層、とくに1997年以降に生まれたZ世代の増加により大きく変化しているとされています。

ハノイ市の広告会社で人事を担当する責任者は、テト休暇後にマーケティング職および営業職を採用するにあたり、求人票の内容をより具体的に更新する必要があると述べています。給与制度、13か月賞与、テト賞与を先に記載し、さらに新しい制度に基づく社会保険の情報も明記するようにしているとのことです。

この背景には、現在の応募者の多くを占める1997年生まれ以降の世代が、給与や福利厚生、労働条件などについて詳細な情報を求める傾向があることがあります。

同責任者によると、従来は一般的な内容の求人票でも多数の応募があり、応募者数が求人を上回る状況でしたが、現在は状況が大きく変化しています。以前の世代は仕事内容そのものに関心を持つことが多く、質問も少なかった一方で、現在の若年層は次のような点について具体的に確認する傾向があります。

  • 総支給額と手取り額の違い
  • 社会保険を総収入で計算するか、最低賃金に近い基準で計算するか
  • 試用期間中の給与が100%支給されるか、85%なのか
  • 残業や時間外労働の賃金計算方法
  • 社内食堂や休憩スペースなどの福利厚生の有無

また、採用担当者は応募者への回答を遅らせることが難しくなり、回答時間を明確に示す必要が出てきていると述べています。

さらに、Coc Coc Researchの調査によると、約23%の企業が、若年層の転職傾向や管理の難しさに対応するため、採用戦略の見直しを迫られているとされています。同調査では、給与水準が高くても応募者が内定を辞退する主な理由として、次の要因が挙げられています。

  • 求人内容が不明確である:55%
  • 企業に関する否定的な評価を見た:49%
  • 面接時の対応が悪かった:44%
  • 人事担当者からの返信がなかった:38%

このように、採用においては求人票の内容だけでなく、採用プロセス全体の体験が重要になっています。

さらに、若年層が日常的に利用するTikTok、Instagram、Threadsなどのソーシャルメディアが採用情報の重要な発信手段となっており、企業に関する否定的な情報が短時間で拡散し、企業の評判に影響する可能性があると指摘されています。そのため、人事担当者には仕事内容や企業文化を正確に伝える姿勢が求められているとされています。

職場選択の基準の変化と企業文化の重要性

人材採用および人材育成サービス企業で人事を担当していた関係者も、現在の若年層は以前の世代と異なり、自分に合った環境を主体的に選ぶ傾向が強いと指摘しています。

以前の世代は選択肢が少なく、安定を優先して職場にとどまることが多かった一方で、現在の若年層は給与だけでなく、採用体験、企業文化、成長機会を重視するとされています。そのため、企業の採用活動も、単に業務ができる人材を探すのではなく、企業に適した人材を選ぶ方向へ変化しています。

この変化は求人票の内容にも表れており、大企業では仕事内容よりも職場環境や企業文化に関する説明を増やす傾向が見られます。

また、現在の若年層は情報の透明性が高い環境で育っており、インターネット上の評価を簡単に確認できるため、不健全な職場環境への耐性が低いとされています。理由が説明されない指示には納得しない傾向があり、説明があれば高い成果を出すが、説明がない場合には反発することもあると指摘されています。

企業が世代間の認識のずれを防ぐためには、業務手順や企業文化を明確に定める必要があり、次のような基本的な対応が重要とされています。

  • 応募者への迅速な回答
  • 業務内容の明確な指示
  • 賃金の適正な支払い
  • 残業を当然としない運用
  • 定期的な対話の実施

人事担当経験者は、人材体験の質が企業の評判に直結し、否定的な評価が拡散すると企業ブランドに影響する可能性があると述べています。

さらに、若年層の価値観の変化により、精神的な負担を当然とする働き方が見直され、仕事と生活のバランスが新しい基準として重視されるようになっていると指摘されています。

Coc Coc社の人事責任者は、若年層は企業に過度な要求をしているわけではなく、公平性、透明性、明確な成長機会を求めているだけであり、企業が適切に制度を設計すれば、企業と労働者の双方に利益があると述べています。

ベトナムにおける採用や人事労務に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※本記事は、公開時点の情報を参考に作成しており、今後変更となる可能性があります。また、具体的な運用は管轄機関によって異なる可能性があるため、実務上は事前にご確認をお願いいたします。

目次