近年、ベトナム国内でもAI(人工知能)の導入が加速し、翻訳や編集、顧客対応など人手を要していた工程が自動化され、組織再編と人員削減を決断する企業が出始めました。本記事では、ホーチミン市の出版社とアニメーション制作会社で実際に起こったAI活用と人員削減の事例をご紹介します。

ホーチミン市の出版社:Vanlangbooks社の大規模リストラ
70%の翻訳担当者と30%の編集者を削減
Zing Newsの2025年4月25日付記事によると、ホーチミン市の書籍出版企業・Vanlangbooks社では、組織再編の一環として翻訳や編集を担当する外部協力スタッフを大幅に削減しました。担当部署である著作権部門の責任者によると、翻訳業務を担っていた外部協力者の約70%、さらに編集者の約30%が削減されたとのことです。
AIを活用した業務効率化
同社では、再構築計画の中でAIを導入し、多くの人員に代替させています。残されたスタッフにはAIツールとの連携方法について追加研修を実施し、新たな業務プロセスに対応できるよう体制を整えています。出版事業のトップは、AIによる書籍翻訳は既に約85%の精度に達しており、最終的な校正を行う翻訳者が1名いれば、ほとんどの工程をAIに任せられるという見解を示しています。
AI導入がもたらす影響:海外の調査結果
米国 Pew Research Center の調査
米国のPew Research Center (2025年4月3日発表)によると、米国の成人 5,410 名を対象にした調査で 64 % が「今後20年で 米国の雇用は減少する」と回答しました。具体的には、レジ係、工場労働者、ジャーナリスト、ソフトウェアエンジニアなどが高リスク職種とされています。また 1,013 名 の AI 専門家調査でも同様の傾向が見られ、トラック運転手などへの影響も指摘されています。
Brookings Institution の報告
米国のBrookings Institutionが2024年10月に公表した報告でも、事務系や法律、金融、営業、IT などの「頭脳労働」分野が AI に代替されやすいと分析されています。ベトナムでも同じ流れが進んでおり、採用ブランディングのコンサルティング企業 TalentView Viet Nam の CEOは「AI は主に反復作業を置き換え、高度な創造性が求められる分野ではまだ完全に置き換わることは難しい」と述べています。
アニメーション制作会社での導入事例
10人から3人へ縮小されたチーム
ホーチミン市に拠点を置くアニメーション制作会社でもAIの活用が本格化しています。同社の管理職によれば、YouTube向けアニメーション制作を行うチームは当初10名体制でしたが、現在はわずか3名にまで縮小されました。
業務プロセス全体へのAIの組み込み
脚本作成にはChatGPTを、背景やキャラクターのビジュアル作成にはMidjourneyを、キャラクターアニメーションにはKlingを、多言語の音声合成にはElevenLabsを活用しています。さらに、これら複数のAIツールを連携させるためにMake AIを導入し、一連の工程を自動化。結果として、同社の生産性は3倍に向上しましたが、戦略的な方向性や芸術性を左右する部分についてはAIではまだ不十分であり、最終的な判断や感性を必要とする役割は人間の担当が不可欠だとされています。
顧客対応スタッフの失職と再就職
顧客対応の80%がAI化
ハノイ市バーディン区在住のH氏(22歳)は、医療機器を扱う企業で主にECサイト経由の顧客対応を担当していました。しかし、同社がAIチャットボットを本格導入したことで、回答の大部分が自動化され、彼女を含めた多数のスタッフが削減されました。
当初は「AIには高度な説得やクロージングは難しいだろう」と考えていたものの、システムの改良が進むにつれAIの応答精度が向上。顧客が注文を確定するまでのサポートをAIが行えるようになり、半年程度の試験運用を経て同社はカスタマーサポート担当の70%を削減する決定を下したといいます。
「AIに使われるのではなく、使いこなす」
失職を余儀なくされたH氏は、対面による交渉や契約締結が不可欠なB2B向け営業職へ転身を図りました。今後は人間同士のやり取りが重要な分野でキャリアを築く一方、「AIを使いこなし、逆に活用する」ための知識を学び直す必要性を痛感したと述べています。
おわりに
AI の導入により、ベトナムの出版社やアニメ制作会社で大規模な人員削減が実際に発生しました。海外調査も、反復作業を中心とする職種が特に代替リスクにさらされていることを示しています。一方で、戦略的判断や芸術性、対人折衝などの分野では、人間の役割が依然として重要です。今後もAIと人間の役割分担を見極めながら、組織体制やスキル開発を柔軟に見直す動きが続くと考えられます。
ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

