MENU

ベトナムにおける障害者雇用の最新事例、企業の工夫と優遇制度

ホーチミン市で障害のある人と企業担当者が就職相談をしている様子のイラスト

ホーチミン市で2025年9月に開催された就職フェアでは、3,127件の求人のうち522件が障害のある方を対象とした優先枠として設定され、497名の障害のある求職者が参加しました。

企業の現場では、障害の特性に応じて活躍できる環境づくりが進んでおり、障害者支援・発展センターの副所長は、「身体的な制約を補う努力から高い成果を出す傾向があり、長期的に職場へ貢献できる」と指摘しています。

本記事では、こうした企業の取り組み事例や、障害者雇用を後押しする優遇制度について紹介します。

目次

ホーチミン市での障害者に広がる雇用機会

3,127件中522は障害のある労働者向け

ベトナム労働新聞の2025年9月18日付記事によると、ホーチミン市雇用サービスセンターと市内の職業訓練・雇用創出センターは「2025年就職フェア」を開催しました。56社が参加し、合計3,127の求人を提示。そのうち522枠は障害のある労働者向けに優先されています。給与は月額500万~2,500万VNDと幅広く設定され、フェアには497名の障害のある求職者が来場し、就職活動や職業相談、政策支援の情報収集を行っています。

障害に配慮した柔軟な働き方の提案

参加企業は、障害のある労働者が無理なく活躍できる職場環境を提示しています。たとえば、視覚障害を持つ求職者に対して、水産会社は在宅勤務が可能なオンライン営業職を紹介。オンラインでの取引対応や製品に関する研修を通じて、移動の負担を減らしながら専門スキルを身に付けられる仕組みを整えています。

ホーチミン市の社会的企業 Tiếp Lửa は、Eコマース分野のオンライン営業職を募集。1日3~6時間の勤務で、月500万~2,000万VNDの収入が得られると説明し、「移動に制約のある人でも安定した収入を確保できる」と伝えています。

さらに、ハノイ市の Sáng Group – Giặt Là Sángは、聴覚障害者を多数雇用していることで知られる企業です。全国で5拠点を展開しており、ランドリー事業のほか、人事、会計、店舗運営など幅広い職種で新たな人材を求めています。新入社員の初任給は月428万VND研修後は535万VND以上となり、手当や社会保険、KPI達成賞与も支給対象です。「能力よりも働く姿勢を重視し、真面目に取り組む人を歓迎する」と代表は語っています。

障害者雇用の意義と強み

イベントでは「障害者雇用は社会的責任であると同時に、持続的発展や安定した社会の基盤」との声があがりました。ホーチミン市青年義勇隊の代表者は「誰も取り残さない」という理念を掲げ、障害者雇用の推進が社会全体の安定につながると述べています。

また、障害者支援・発展センター(DRD)の副所長は、障害のある労働者は身体的な制約を補う努力から高い成果を出す傾向があり、長期的に職場へ貢献できると指摘。具体例として、視覚障害者は集中力や記憶力を生かしコールセンターやオンライン販売に適していること、下肢に障害を持つ人は縫製や組立ラインで手先の器用さを発揮し、生産性が高いケースもあると紹介しています。

求人募集と並行して、参加企業は障害のある労働者や学習者に500点以上の支援物資(1点あたり50万~100万VND相当)を提供。こうした取り組みは生活面での助けとなるだけでなく、今後の挑戦を後押しする励みにもなっています。

障害者雇用がもたらす二重の利益

障害者雇用を支える企業の取り組み

ベトナム労働新聞の2025年9月24日付記事によると、Changshin Vietnam(ドンナイ省)は、数百人規模の障害のある労働者を雇用し、健康状態や希望に応じた職務配置を行っています。毎年「ベトナム障害者の日(4月18日)」には表彰や贈り物を通じて模範となる事例を称え、困難に直面した従業員には臨時のサポートを行うなどの職場環境づくりに力を入れています。

また、27-7社(Công ty TNHH MTV 27-7、ホーチミン市)は、障害のある労働者や戦傷者を多数雇用している企業です。手工芸品の製作・販売を通じて安定収入を提供してきましたが、新型コロナ禍や競争激化で工房は一時閉鎖を余儀なくされました。それでも同社は他社と連携して再就職を支援し、さらに無料宿舎を提供するなど、生活基盤の支援も続けています。

加えて、定年を迎える前で重労働に適さなくなった従業員については、同社が運営するたばこ工場の軽作業に配置換えを行っています。これにより、従業員は収入を維持しながら自分の役割を実感し、職場から切り離されることなく働き続けることが可能となっています。

Sáng Group – Giặt Là Sángの社長は次のように語っています。

障害のある労働者を雇用することは、本人に利益をもたらすだけでなく、企業にとっても人間的なイメージの構築内部の結束強化につながります。障害者が職場に溶け込むことで、集団全体が分かち合いや努力の価値を学ぶことができます。これは企業と社会の双方に利益をもたらす 「二重の利益」 です。

障害のある人を取り巻く社会の現状

保健省社会保護局の統計によれば、2024年末時点でベトナムには800万人以上の障害者が存在し、これは2歳以上人口の約6%に相当します。そのうち170万人が重度障害で毎月の社会保障を受給し、80万人が貧困・準貧困世帯に属しています。

日系企業による障害者雇用の取り組み

取り組みの内容

タインニエン紙の2025年7月2日付記事によると、UNIQLO Vietnamは2022年より障害者支援・発展センター(DRD)と連携し、障害のある労働者の採用と職場定着に取り組んでいます。採用前の調査・準備を行ったうえで、障害のある労働者向けに特別な研修プログラムを設計。業務に近いシミュレーション演習や「同行サポーター」の配置を実施し、さらに家族が研修に参加できる制度を導入して、理解と支援を促進しています。障害者支援・発展センター(DRD)は試用期間から雇用後まで密接に関与し、発生する課題への対応を支えています。

雇用の成果と影響

記事の時点で、ハノイ・ホーチミンの10店に10名の障害のある労働者が勤務し、全29店舗の従業員に対する割合は約1%です。障害者支援・発展センター(DRD)の副所長は、このプログラムが偏見を乗り越えて、障害のある労働者自身に自信と尊厳を取り戻す機会を提供していると評価しています。さらに、労働者のなかには日々の業務を責任をもって遂行するだけでなく、効率改善につながる提案を上司に行う姿勢が見られ、店舗運営への貢献も確認されています。

障害者を多く雇用する企業への優遇措置

障害者雇用率に応じた優遇

Tuoi Tre紙の2025年2月15日付記事によると、ホーチミン市弁護士協会所属のある弁護士は、障害のある労働者を一定数以上雇用する企業に対しては優遇制度が整備されていると述べています。

具体的には、10人以上の障害のある労働者を雇用、あるいは従業員の30%以上を障害のある労働者が占める事業所は政策的支援を受けることができ、この点は障害者法や政令第28/2012/NĐ-CP号(第9条・第10条)に規定されています。

支援内容の詳細

障害者雇用率に応じて以下のような支援措置が認められています。

  • 労働環境の整備費用の支援:障害者に適した労働条件を整えるための改修費用を国が補助(補助額は雇用率や障害の程度、事業規模によって決定)。
  • 法人税の免除:税法に基づき、対象事業所は法人税を免除。
  • 優遇融資:社会政策銀行を通じて、事業発展のための低金利融資を受けられる。
  • 土地・施設の利用優遇:土地・建物・水面の賃貸において優先される。特に従業員の70%以上が障害者の場合は全額免除、30~70%の場合は50%減額となる。

2025年雇用法による失業保険料の優遇措置

ザンチー紙の2025年8月3日付記事によると、2025年雇用法(法律第74/2025/QH15号)2026年1月1日から施行予定であり、その中で失業保険料に関する新しい優遇措置が盛り込まれました。同法第33条第6項では、障害者を新規に採用し雇用する使用者は、使用者負担分の失業保険料が最大12か月間軽減されると規定されています。

失業保険料の基本的な拠出は、労働者・使用者・国家がそれぞれ月額賃金の最大1%と定められていますが、障害者を雇用する使用者に対してはこの新制度により負担が減免されます。ベトナム社会保険は、この仕組みを「使用者が社会的責任を果たしつつ障害者に雇用機会を創出する際の具体的かつ直接的な支援策」と説明しています。

おわりに

ベトナムでは障害者雇用が制度面で奨励されていますが、実際には積極的に取り組む企業は限られています。それでも、障害の特性に応じた働き方を提示し、雇用を実現している事例も存在します。制度の後押しと企業の実践が広がることで、より持続的な雇用環境が整うことが期待されます。

ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

目次