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ベトナムの電子労働契約に関する政令案の最新動向

電子労働契約をパソコンとタブレットで確認する男女のイラスト

2019年労働法は、書面による労働契約に加え、電子的手段による労働契約の締結も正式に認めています。近年は、企業の契約手続の効率化やデジタル政府方針を背景に、電子労働契約の活用が進みつつある一方で、実務上のガイダンス不足やデータ接続の遅れなど、制度面の課題も指摘されています。

本記事では、労働法上の規定、政府が進める電子労働契約プラットフォーム、技術企業の導入状況、さらに政令案の主要ポイントを紹介します。

目次

労働法上の電子労働契約

2019年労働法(2021年1月1日施行)では、書面による労働契約の締結だけでなく、電子的手段による労働契約の締結についても認められています。

労働法 第14条 労働契約の形式

  1. 労働契約は書面で締結し、2部作成するものとし、労働者が1部、使用者が1部を保管する。ただし、本条第2項の規定に該当する場合はこの限りではない。

 労働契約は、電子取引に関する法律の規定に従い、データメッセージの形式による電子的手段を通じて締結する場合、書面による労働契約と同等の効力を有する。

  1. 両当事者は、期間が1か月未満の契約については口頭で労働契約を締結することができる。ただし、本法第18条第2項、第145条第1項a号、および第162条第1項に規定される場合を除く。

電子労働契約プラットフォーム整備の加速

政府による政令案の早期完成指示

VnEconomy紙の2025年8月13日付記事によると、政府は内務省に対し、電子労働契約プラットフォームの構築に関する政令案を早急に完成させるよう指示しました。

政令案の目的は、全国規模で統一された集中型の電子労働契約プラットフォームを構築し、電子労働契約に関するデータの受理、管理、保存、共有を可能にする法的基盤を整えることにあるとされています。また、住民データベース、社会保険データベース、内務分野のデータベースなど、関連システムとの接続を実現し、労働・給与・社会保険分野の国家管理や企業・国民向けサービスへの活用を見据えた設計が求められているとされています。

プラットフォームの利用主体と機能

電子労働契約プラットフォームは、内務省が管理する情報システムであり、全国規模で電子労働契約データを集中管理する役割を担います。

利用主体には、内務省、地方の内務局、住民データ・税務・社会保険など関連データベースを管理する国家機関、労働紛争解決機関、各省庁・地方自治体、労働者、使用者、電子労働契約サービス提供者(技術仲介者)などが含まれるとされています。

試験段階での主要機能として、住民データベース・組織識別システムによる労働者および使用者の身元認証、VNeIDを用いたログイン、サービス提供者を介した電子労働契約データの受理・保存、地方内務局による労働使用状況の報告機能などが提示されています。

電子労働契約の導入状況

VnEconomy紙の2025年11月5日付記事によると、電子労働契約に関する公的な統計は現時点で存在しませんが、電子労働契約ソフトを提供する技術企業からの情報では、約21社がこの分野に参入しているとされています。ある企業の報告によると、同社の電子労働契約ソフトウェアは17,230の使用者に利用され、毎月250万件以上の電子労働契約が発生しており、2021年以降は年間ほぼ100%の成長率を示していると推定されています。

しかし、電子労働契約の利用企業数や契約取引件数は、労働市場に参加する労働者・使用者数と比較すると依然として十分ではありません。現在、VNPT、FPT、Viettel、EFYなど多くの技術企業が各社独自のインフラや技術基盤を用いた商用ソフトを提供していますが、これらは主に企業内部の管理目的に用いられており、国家機関向けの統計・予測分析・政策立案に必要な機能を備えていません。また、全国的な電子取引管理、地域別の契約締結状況の把握、国家の住民データベースとの接続、関係者による契約情報の照会機能なども未整備とされています。

電子労働契約に関する政令案

電子労働契約の利点と課題

ベトナム電子政府新聞の2025年11月4日付記事によると、内務省は電子労働契約の締結および実施を規定する政令案を作成し、国内外の組織・機関・個人から意見を募っています。

内務省は、2019年労働法(2021年1月1日施行)の施行後5年間の監視と評価の結果、電子労働契約が労働者と使用者に多くの利便性を生み出したと説明しています。

特に、多数の労働者を抱える企業においては、

  • 契約締結における空間・時間の柔軟性が高まること
  • 契約書の作成・承認・管理・保管に要する時間・費用・人員を削減できること
  • 企業の管理・運営効率が向上すること
  • 労働契約情報の安全性・機密性が高まること

といった利点が示されています。電子労働契約は、デジタル政府・デジタル経済・デジタル社会の発展傾向とも合致した、進歩的で将来の要請に適した仕組みと位置付けられています。

一方で、運用面では課題も残されています。修正・補足・終了に関する具体的なガイダンスが存在しないことや、電子的方法による契約の効力要件に関する規定が不足していること、また税務・社会保険・銀行など第三者との取引において電子労働契約の法的価値が十分に認められていない点が指摘されています。そのため、多くの企業が、規定を円滑かつ統一的に適用するための明確なガイドラインの整備を提案しています。

政令案の構成と主要な規定

政令案は 5章29条 で構成され、電子労働契約の締結・実施、電子労働契約プラットフォームの構築・運用方法が規定されています。

基本原則としては、労働法に基づく内容面の遵守、電子取引法に基づく形式面の遵守、電子労働契約の法的価値の確保が示されています。

政令案では、契約に関与する主体として

  • 労働者
  • 使用者
  • 電子労働契約ソフトウェア提供者(eContract)

が定義されており、このソフトウェア提供者は契約の作成・電子署名・保存・検索・管理を仲介する第三の主体として位置付けられています。

さらに、電子労働契約は電子的な方式で締結され、合法的な電子署名を使用することが求められています。また、契約にはプラットフォームが自動付与する 一意の識別コード(ID) を付ける必要があり、これは照会・対照・報告・検査の基礎となるとされています。

契約の効力発生時点については、民法と労働法の原則を踏まえ、電子労働契約は「最後に電子署名が行われた時点」を基準とする案が示されています。電子的な環境では署名の同時性が確保できないため、この基準が必要であると説明されています。

契約変更手続と関係主体の責任

政令案では、電子労働契約の修正、補足、延期、終了についても電子的手段で手続を行えるよう規定されています。これは、

  1. 当初から電子的手段で締結された契約
  2. 紙で締結された契約を電子的に変更するケース

の双方を対象としており、付随する電子文書の法的価値を確保するための条件と方法が示されています。

さらに、関係省庁・地方機関の責務、電子労働契約サービス提供者の権利・義務、労働者と使用者の責任が具体的に明記されているとしています。これらの規定は、電子労働契約プラットフォームが円滑に機能し、契約データが「正確・完全・クリーン・有効」に維持される体制を整備するためのものとされています。

おわりに

電子労働契約は、企業の業務効率化に寄与する一方、法的整備や統一的な運用指針は依然として発展途上にあります。今後は政令案の確定とプラットフォーム整備が進むことで、契約管理のデジタル化がさらに広がるとみられます。引き続き、制度の動向について情報をお届けしてまいります。

ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

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