フート省(旧:フート省・ビンフック省・ホアビン省)は2025年前半、GRDP成長率10.09%を達成し全国トップ10に入りました。体制再編を経ても経済は力強く拡大していますが、その裏側で人材不足や労働市場のミスマッチが深刻化しています。本記事では、フート省の成長の実態と労働力不足の現状、そして年末に迫る採用需要4万人超の動きを整理します。
経済成長の背景と産業構造の変化
二桁成長と拡大する産業
ネットメディア『カフェF』の2025年8月14日付記事によると、2025年前半から7月にかけて、フート省の経済・社会は大きな発展を遂げました。6か月間の平均経済成長率(GRDP:Gross Regional Domestic Product)は10.09%に達し、全国でもトップ10に入る高水準となっています。経済規模は186.4兆VNDに達し、急速な成長が確認されました。
経済構造は工業化・近代化の方向へとシフトしており、産業構成比では工業・建設分野が46.58%を占めています。電子部品、ノートパソコン、エアコンといった主力製品はいずれも堅調に伸びています。
フート省人民委員会の副主席は、経済成長と歳入の伸びについて「非常に印象的な成果」と評価し、中央政府からも高い評価を得たと強調しました。さらに、3省合併や行政モデルの移行といった困難な状況でも社会保障政策を着実に実行してきたと述べ、2025年のGRDP2桁成長を達成するとの決意を示しました。
GRDP成長率ランキング(2025年上半期)
ネットメディア『カフェF』の2025年7月4日付記事によると、ベトナム財務省の報告では、2025年最初の6か月間は全国的に経済成長が加速し、過去20年で最も高い水準となっています。特に各省・市の6か月間のGRDP成長率を見ると、以下のように二桁成長を遂げた地域が目立ちます。
旧63省・市単位(6か月間のGRDP成長率)
- バクザン省 14.01%
- クアンガイ省 12.40%
- ナムディン省 11.84%
- ダナン市 11.70%
- ハイズオン省 11.59%
- ハナム省 11.09%
- ハイフォン市 11.04%
- クアンニン省 11.03%
- フート省 10.33%
- ビンフック省 10.07%
新34省・市単位(6か月間のGRDP成長率)
- クアンガイ省 11.51% *旧:クアンガイ省・コントゥム省
- ハイフォン市 11.20% *旧:ハイフォン市・ハイズオン省
- クアンニン省 11.03%
- ニンビン省 10.82% *旧:ニンビン省・ハナム省・ナムディン省
- バクニン省 10.47% *旧:バクニン省・バクザン省
- フート省 10.09% *旧:フート省・ビンフック省・ホアビン省
労働市場の矛盾 ― 余っているのに足りない
工業団地で深刻化する人材不足
ネットメディア『カフェF』の2025年8月29日付記事によると、フート省では工業団地を中心に多くの企業が労働者不足を訴えています。特に、労働者が長期契約の締結を避け、短期間で職場を変える傾向が強く、企業側の人材確保を困難にしています。
2025年8月28日にフート省内務局が開催した「雇用サービスセンター・労働供給企業・韓国企業協会」による労働需給連携会議でも、この問題が大きく取り上げられました。会議で同省内務局長は、現在、省内には約57万5,000人の労働者が2万3,000社以上の企業で働いており、そのうち外国投資企業(FDI企業)に雇用されているのは55万9,000人以上にのぼると説明しました。
構造的な課題と企業の不安
しかしながら、労働市場には以下のような課題が残されています。
・労働者の「ジョブホッピング(短期間での転職)」が広く見られる
・多くの企業が未熟練労働者の採用に依存しており、高度な技能を持つ人材が不足
・労働供給・マッチングの仕組みが未整備
・労働者が近隣の大都市へ流出する傾向
こうした中で、韓国企業を中心とする投資企業からは「労働者の供給が安定しなければ事業継続が困難になる」との声が上がりました。特に、労働者が長期契約を避けるため、人員計画の見通しを立てられないことが深刻な課題となっています。
行政の見解と協力の枠組み
一方で、省内の採用機関や労働供給企業は「フート省には労働力不足はない」との見解を示しました。主な課題は、採用主体と企業とのつながりが十分でないこと、そして企業側の給与・社会保障制度が整っていないため労働者を引き留められないことにあるとしています。
フート省人民委員会の副主席も「フート省の労働人口は186万人以上で、工業団地の需要を十分に満たすことができる」と強調しました。そのうえで、省内務局には企業採用支援や労働法遵守の監督、人材開発計画の提案を求め、工業団地管理委員会と投資促進センターには企業支援と労働者の質確保を指示しました。さらに、雇用サービスセンターや労働供給企業には省内の労働力活用と法令遵守を要請し、韓国企業協会には長期的な採用計画の策定や待遇改善による人材確保を呼びかけました。
また、この会議ではフート省の労働供給企業と韓国企業協会との間で、労働需給のマッチング強化に関する協力覚書(MOU)が締結されました。覚書は2030年まで有効で、労働法の遵守、福利厚生や労働環境の改善を盛り込み、持続的な人材確保と労働市場・経済社会の発展を目指すものです。
年末に向けた労働力需要の急増
4万人超にのぼる採用ニーズ
ザンチー紙の2025年8月29日付記事によれば、2025年第4四半期に入ると、フート省の企業は一斉に新規採用を強化し、40,000人以上の労働者を新たに必要とする見通しとなっています。需要が集中しているのは、労働集約型産業です。繊維・縫製、履物、電子部品、建材、機械などの分野で多くの一般労働者が求められています。とりわけ、フート省で活動する18社の韓国企業は、あわせて3,340人を採用する必要があると報告されています。
定着率の低さと人材の質的課題
フート省内務局のチャン・ヴィエット・クオン局長は「労働力供給は企業の競争力を高めるうえでの核心的な要素だ」と指摘しました。しかし実際には、多くの労働供給企業が依然として単独で活動しており、相互の連携を欠き、主体的に人材を確保する取り組みも不足しているため、企業から急な採用要請があった際に受け身の対応になってしまっていると述べました。
さらに、労働者の定着も課題です。短期間での転職や近隣省市への流出が頻発しており、給与・福利厚生の差がその背景にあります。労働者の73.3%が職業訓練を受けているものの、資格保持者は34.6%にとどまり、高付加価値産業の人材不足は依然深刻です。労働供給企業経由の平均月収は770万VNDで、北部他省と比べて競争力に欠けるとされています。
おわりに
二桁成長を達成したフート省ですが、工業団地を中心とする人材不足は企業経営に大きな影響を与えつつあります。年末の採用需要の集中は一時的な現象にとどまらず、構造的な課題を映し出しています。今後も同省の労働市場の動向を継続的に紹介していきます。
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※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

