ベトナム統計総局(GSO:General Statistics Office of Vietnam)は2024年版の「Spatial Cost of Living Index(SCOLI)」を公表しました。SCOLIとは、日常生活に必要な消費財・サービスの費用(生活費・物価水準)を地域・省・直轄都市ごとに比較する指標です。本記事ではまず省・直轄都市別SCOLIの主な結果を紹介し、各地域の位置づけを確認したうえで、地域別SCOLIの特徴や2023年比で大きく変動した省・市を整理します。
省・直轄都市別SCOLIの主な結果
上位5都市・省とその地域
2024年のSCOLI(ハノイ市=100を基準)で上位となったのは、以下の5都市・省です。かっこ内には、それぞれが属する地域を示しています。
- ハノイ市(紅河デルタ):100.00
- クアンニン省(紅河デルタ):99.94
- ホーチミン市(東南部):99.80
- ハイフォン市(紅河デルタ):98.43
- ダナン市(北中部・中部沿岸):98.21
ハノイ市(100.00)
首都であり、全国の生活費指数(SCOLI)の基準となる都市です。政治・経済・文化の中心地として、全体的に価格水準は高く、特に家賃や教育、サービス関連の費用が他地域に比べて高めに設定されています。2024年も引き続き、全国で最も高い生活費水準を維持しました。
クアンニン省(99.94)
紅河デルタ東部の沿岸部に位置し、全国第2位の価格水準となりました。医療(109.37%)、住宅・光熱費を含む住居関連(104.38%)、その他の生活関連サービス(100.37%)などではハノイ市を上回る一方、文化・娯楽・観光(90.72%)、交通(92.18%)、衣料・履物・帽子(94.41%)などは平均を下回っています。観光地ハロン湾を有し、北部経済圏の重要な拠点でもあります。
ホーチミン市(99.80)
東南部最大の都市で、ベトナム経済の中心地です。教育(135.23%)、通信(107.06%)、飲料・たばこ(104.69%)、住宅関連(103.43%)ではハノイ市を上回る価格水準となっている一方、衣料・履物・帽子(83.59%)、飲食・外食サービス(96.37%)、文化・娯楽・観光(96.43%)、交通(97.09%)などは割安です。消費活動が活発で、生活スタイルの多様性も特徴です。
ハイフォン市(98.43)
紅河デルタにある港湾都市で、全国第4位の価格水準です。通信(105.49%)、住宅関連(103.5%)、家庭用品(102.75%)、飲料・たばこ(101.11%)はハノイ市を上回る一方、衣料・履物・帽子(89.56%)、教育(95.57%)、医療(96.02%)、飲食・外食サービス(98.48%)などは割安です。港湾・工業・観光が盛んで、北部では高い所得水準を有しています。
ダナン市(98.21)
北中部・中部沿岸地域の主要都市で、2023年から3ランク上昇し、物価水準が高まりました。飲料・たばこ(111.17%)、通信(123.2%)、教育(122.08%)ではハノイ市を上回る一方、飲食・外食サービスや医療・教育費は比較的安定しています。ハノイやホーチミン市と比べると全体としてやや割安な水準で、住環境やインフラが整った観光都市としての魅力も持ち合わせています。
下位5省とその地域
指数が低かったのは、次の5省です(かっこ内は所属地域)。
- クアンチ省(北中部・中部沿岸):91.46
- ベンチェ省(メコンデルタ):92.30
- クアンガイ省(北中部・中部沿岸):92.69
- カマウ省(メコンデルタ):93.14
- ナムディン省(紅河デルタ):93.81
クアンチ省(91.46)
北中部・中部沿岸地域に位置し、2024年のSCOLIで全国最低水準(ハノイ比91.46%)となりました。経済基盤は農業・林業・水産業・軽工業が中心で、可処分所得が全国でも特に低い水準にあります。そのため、食料品や衣料・履物・帽子、住宅関連(家賃・電気・水道など)をはじめとする多くの生活費項目で価格が抑えられています。また、大型の娯楽施設なども少なく、娯楽・観光・サービス関連の支出も少ない傾向にあります。
ベンチェ省(92.30)
メコンデルタ地域に属し、2024年のSCOLIはハノイ比92.30%で全国第2位の低さとなりました。農業・畜産を中心とした地域経済で、日常必需品の供給体制が整っていることから、衣料品、外食、生活サービス全般の価格が抑えられています。また、労働力コストや家賃が安価で、医療や教育も主に公立機関に依存しているため、全体として生活費が非常に低く抑えられているのが特徴です。
クアンガイ省(92.69)
北中部・中部沿岸地域に属し、2024年のSCOLIはハノイ比92.69%となりました。2023年から順位を大きく下げ、全国で3番目に低い生活費水準となっています。特に衣料・履物・帽子(81.97%)、飲食・外食サービス(87.64%)、通信(89.17%)などの価格が大幅に低く、生活コスト全体を押し下げる要因となっています。
地域別SCOLIの概要(紅河デルタ=100)
下記が2024年の地域別SCOLIと、主な都市・省の例です。
- 東南部(100.37) …ホーチミン市、ビンズオン省、ドンナイ省など
- 紅河デルタ(100.00) …ハノイ市、クアンニン省、ハイフォン市など
- 北部内陸・山岳(99.98) …ソンラ省、バクカン省、フート省など
- 北中部・中部沿岸(99.05) …ダナン市、クアンチ省、クアンガイ省など
- 中部高原(97.69) …ザライ省、ダクラク省など
- メコンデルタ(97.11) …ベンチェ省、カマウ省、ロンアン省など
主な特徴
- 東南部(100.37)
工業・商業・国際交流の中心地帯で所得水準が高く、都市化も進んでいるため全国的に最も割高。 - 紅河デルタ(100.00)
首都ハノイ市や主要港湾都市を含み、高い価格水準を示す地域です。 - 北部内陸・山岳(99.98)
一人当たり所得が低い反面、物流費や寒冷期の生活コストなどで価格が上昇する面があります。 - 北中部・中部沿岸(99.05)
水産物が豊富で、外食を含む食料費が安め。物流インフラの整備も価格抑制に寄与しています。 - 中部高原(97.69)
医療や教育費を含め、多くの項目が全国平均より安価です。 - メコンデルタ(97.11)
水産物・果物生産が盛んで、食品関連が全国で最も安い傾向にあり、家賃や公共料金も低水準。
2023年比の大きな変動
2024年は63省・直轄都市のうち、25省が前年より指数低下(割安に)、32省が指数上昇(割高に)、6省が変動なしという結果でした。特に、順位が大きく変化したのは以下の通りです。
大きく順位が下がった(割安になった)省・市
- バクザン省、クアンガイ省、バクリエウ省、トゥエンクアン省など
いずれも10〜14ランク程度下落。食料品・教育・衣料品・その他サービスなどの価格が相対的に低下したことが要因とされています。- 例)バクザン省:2023年の28位から2024年は42位へ大幅下落。衣料品(97.35%)、交通(94.47%)、家屋関連(92.27%)の指数がハノイ市を大きく下回りました。
- 例)クアンガイ省:49位から61位へ下落。衣料品(81.97%)、飲食(87.64%)、通信(89.17%)が低水準となっています。
大きく順位が上がった(割高になった)省・市
- バクカン省、タイビン省、ニンビン省、フーイエン省、ソンラ省、ソクチャン省、タイグエン省など
おおむね7〜10ランク程度上昇。医療費や飲料・たばこ、衣料品など一部グループの価格が前年より上昇したことが挙げられます。- 例)ニンビン省:2023年の41位から33位へ。医療(105.5%)、飲料・たばこ(ハノイ市比で約1.88%高)などが要因。
- 例)ソンラ省:17位から9位へ。飲料・たばこ(106.36%)、衣料品(102.23%)がいずれもハノイ市を上回り、順位が上昇しました。
変動のなかった省・市
- ハノイ市、カオバン省、ホアビン省、ハイフォン市、ゲアン省、トラビン省
昨年と変わらずハノイ市は最上位、ハイフォン市は上位を維持し、その他の省は大きな価格変動が見られず順位が安定しています。
おわりに
2024年版のSCOLIを見ると、依然として東南部や紅河デルタなど都市化・所得水準の高い地域が上位を占め、メコンデルタを中心とする農業・水産業が盛んな地域は低い指数が続くことがわかりました。また、前年からの価格変動によっては、順位を大きく上げたり下げたりする省もあり、各地域の経済状況や生活コストの変化が垣間見えます。
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