ベトナムでは、改正された社会保険法(以下、2024年社会保険法)が2025年7月1日から施行される予定です。この施行を前にして、社会保険一時金(一定の条件を満たした労働者が将来の年金ではなく、積み立てた保険料相当分から一括で受け取れる制度)をめぐる規定や運用方法に関し、労働者の間でさまざまな動きや疑問が生じています。
本記事では、ベトナム国内の統計や関係当局の見解をもとに、社会保険一時金における最新の受給傾向と、2024年社会保険法の施行に伴うメリットや課題を整理します。
社会保険一時金受給の減少傾向
全国的な減少
ベトナム社会保険の2025年4月17日記事(ベトナム語)によれば、2025年1月から3月末にかけて、社会保険一時金を受給した人の数は前年同期と比較して大幅に減少しました。具体的には、2025年3月末までに全国で267,493人が社会保険一時金を受給しており、これは前年同期に比べ約70,000人、率にして26.17%の減少にあたります。
ホーチミン市における変化
このような全国的な傾向は、都市部でも顕著に表れています。ベトナム社会保険の2025年1月2日付記事(ベトナム語)によると、2024年にホーチミン市で社会保険一時金を受給した労働者数は約99,900人で、過去5年間で最も少なく、前年から11.4%減少しました。ホーチミン市社会保険局長によると、2023年の失業者増加により1年後には一時金の請求が増えると2024年初頭に予想されていた中で、実際には減少したということでした。
2024年社会保険法によるメリット
ベトナム社会保険の政策実施部門長によると、2024年社会保険法が施行される前から社会保険に加入していた労働者の権利保護が明確化されたことで、「施行後に不利になるかもしれない」という懸念が薄れ、安易に一時金を受給しようとする動きが減少しているといいます。
また、2024年社会保険法では従来20年必要だった年金受給のための社会保険加入期間が15年に短縮されました。これにより年金を得られるハードルが下がり、一時金より長期的な給付を重視する労働者が増加しているようです。さらに、ベトナム経済の回復や、「一時金受給のリスク」「長期給付の利点」に関する当局の周知活動も、一時金の早期受給を控える傾向を後押ししています。
2024年社会保険法に対する労働者の懸念事項
一方、労働者の間では、「15年間加入した従業員は社会保険一時金を選べるのか」「7月1日以前の加入期間を清算(一時金受給)してから改めて加入した場合はどうなるのか」といった2024年社会保険法に対する疑問の声も上がっています。2025年4月27日時点では公式なガイドラインはまだ出ておらず、ベトナム内務省が実施の詳細を定める政令案をまとめている段階にあります。
おわりに
2025年7月1日から施行される2024年社会保険法に関しては、社会保険一時金受給の大幅な減少というポジティブな影響が見られる一方で、具体的な受給要件や過去の加入期間の扱いなど、解決すべき疑問がまだ残っており、今後も最新の政令やガイドラインが待たれます。
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※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

