ベトナム電子政府新聞の2025年7月23日付記事によると、ベトナム政府は2025年のGDP成長率を8.3~8.5%に目標設定し、その実現には建設業の9%以上の成長が不可欠とされています。建設業は2025年上半期に前年同期比9.62%の成長を記録し、2021年以降で最も高い伸びを示しました。
さらに、同じく2025年8月19日付記事によると、8月19日には、全国34省・市で一斉に89のプロジェクトが竣工し、161のプロジェクトが着工される式典が行われました。これらのプロジェクトは、インフラや医療、エネルギー、交通といった幅広い分野をカバーするとともに、総投資額は約1,280兆ドン(約7兆円)にのぼります。
一方で、ベトナム建設請負業協会(VACC)の2025年8月2日付記事によると、2025年第2四半期の建設業界は求人件数が前年同期比171.96%と急増しているにも関わらず、応募件数は42.52%と大幅に減少し、需給のバランスが大きく崩れています。
本記事では、この建設業における人材不足の現状とその背景について紹介します。
ベトナム北部・中部の建設業における人材不足
北部:工場勤務へ転向する労働者の傾向
ベトナム建設省が運営する『XAY DUNG』の2025年6月2日付記事によると、北部の公共投資や大規模不動産プロジェクトが相次ぐ中、仕事は豊富にあるものの、必要な労働者を確保できていません。ある請負業者は「以前は労働者が職を探しても現場が不足していたが、今は仕事が多いのに労働者が集まらない」と述べています。
また、多くの建設労働者が工場勤務へ転向する傾向があるほか、春作の収穫期でもあるため、現場に戻ろうとしない労働者も増えています。その結果、人手不足が深刻化し、施工の進行に支障が出ています。
さらに、資材の価格上昇と供給不足も続いており、こうした資材価格の高騰と人材不足が重なったことで、不動産プロジェクトの進捗の遅れを招いています。この状況は建設コストと不動産価格の双方を押し上げ、投資家や購入者にとって二重の圧力となっていると指摘されています。
ハノイ:より軽い仕事を求める労働者
ベトナム建設省が運営する『XAY DUNG』の2025年7月13日付記事によると、2025年前半、ハノイの労働市場は回復し、6月には全市で68,000件を超える求人が記録されました。経済の回復と事業活動の拡大で採用需要は高まっていますが、建設労働者の確保は難しい状況が続いています。
ハノイ市職業紹介センターの副所長は、「建設業の一般労働者(建設工、作業員)は生活水準の変化に伴い、より軽い仕事を求めるようになっている。そのため、月給が1,000万VNDを超える水準でも、建設現場の労働者を集めるのは容易ではありません」と述べています。
さらに、「時には、専門職を探すよりも建設業の一般労働者を見つける方が難しい。多くの企業は工期を守るために必要な作業員の確保に頭を悩ませている。職業紹介センターを通じても十分な人数を採用できない」とも指摘しました。
ダナン:他省からの採用が難しい状況
Tuoi Tre紙の2025年6月16日付記事によると、ダナンの多くの建設現場でも資材価格の高騰と人材不足という二重の困難に直面し、工期が遅れています。
ある個人住宅の建設現場では、週明けの月曜日にもかかわらず作業員はわずか5人しかおらず、請負業者は「資材価格の上昇や人材不足により、契約どおりの進行ができない」と述べました。また、別の請負業者は「これまでゲアン省やハティン省などから労働者を採用できていましたが、今年に入ってからは外部の省からほとんど採用できない」と話しています。
大規模なプロジェクトでも同じように人材不足が深刻で、砂の価格上昇と重なり、多くの企業や請負業者があらゆる手を尽くしても必要な人数を確保できていません。ある建設会社の代表は「今年は工事が多すぎる。建設作業員だけでなく、内装や防水などの作業員も常に不足している」と語りました。また、ある企業は「以前、仕事がなかった時期に多くの職人が他の場所に移ってしまい、今は呼び戻せない。今年は資材価格も上昇しており、本当に厳しい」と述べています。
現在、補助作業員の日当は38〜45万VND、建設作業員は約50万VNDですが、それ以上支払っても労働者を見つけることはできない状況です。 多くの建設会社は地方で労働者を探し、仲介者に紹介料を支払って人材を確保しようとしていますが、状況は改善していません。
建設労働力の構造と採用競争
臨時労働者への依存と人材比率の偏り
ベトナム建設請負業協会(VACC)の2025年8月2日付記事によると、建設業界は毎年40万〜50万人の新規労働者を必要とし、2030年には総労働者数が1,200万〜1,300万人に達すると見込まれています。しかし、現在の労働力の大半は農閑期や短期の工事・プロジェクトで働く臨時労働者であり、多くは技能を持たず訓練も受けていません。こうした労働者が全体の約75%を占めています。
一方で、専門学校・短大卒業者は11.8%、高等技能を持つ6級・7級の技能工はわずか7%にとどまります。さらに、技師:中等専門:職業訓練工の比率は1:1.3:0.5であり、国際的な平均水準とされる1:4:10とは大きく異なっています。
高額給与による人材囲い込み
加えて、近年一部の大手建設会社は、工長に月3,000万〜4,000万VND、作業員に1,500万〜2,500万VNDという高額の給与を提示して募集しています。補助作業員の賃金は日給15万〜35万VND(約450万〜1,050万VND/月)、熟練工は日給30万〜60万VND(約900万〜1,800万VND/月)、工事現場の主任は平均月額1,860万VND程度です。
このような突出した給与水準は、中小企業が労働者を確保することを一層困難にし、不公平な競争や労働者の囲い込みを招き、建設労働市場を不安定にしていると協会は指摘しています。
労働環境の厳しさと熟練労働者の不足
厳しい現場環境で他産業へ人材流出
VnEconomy紙の2024年3月13日付記事によると、建設業界では厳しい労働環境が人材不足の大きな要因の一つとなっています。建設現場は炎天下や寒冷、雨風の中での作業に加え、高所など危険な環境での作業が多く、他産業に比べて労働環境が厳しいため、多くの労働者は電子機器、縫製、加工といった他業種へと流れていきます。
多くの省・市で発展している工業団地では、労働者の月収はおおむね1,000万VND前後で、地元で安定して働けるという利点があり、製造業は建設業と比べると労働者を惹きつける上で優位な立場にあります。
熟練労働者の不足による現場の負担
現在、建設業界の労働力は主に短期労働者で、農閑期の農業労働者、季節労働者、プロジェクトごとの労働者などから構成されており、多くは未熟練です。実際、ロンタイン空港プロジェクトでは、ベトナム人労働者の48%が地ならしや単純作業に従事し、建設技術や柱の組立て、盛土、溶接などはほとんど外国人労働者が担っていました。VACC会長は「熟練労働者が不足すれば、国内においてすぐに劣勢に立たされる。しかも、多くの外国人が参加するプロジェクトも珍しくなく、これが建設企業の弱点になっている」と指摘しています。
同会長はさらに、労働者の確保が難しく、とりわけ熟練労働者の確保が一層難しいと述べています。あるプロジェクトでは、従来タインホア省やニンビン省出身の労働者を採用していましたが、十分に人が集まらず、新たに少数民族の方々も採用することとなりました。その結果、現場では多様な言語が飛び交い、未経験の方も多かったため、技術者や管理者が丁寧に指導する必要があり、現場運営に工夫が求められました。
ユーロウィンドウ社の副社長は、このような問題はベトナムに限らず、韓国や台湾を含む多くの東南アジア諸国でも共通して見られるとコメントしています。
おわりに
ベトナム建設業は経済成長の中で大きな役割を担いながらも、深刻な人材不足に直面しており、特にベトナム北中部において工期の遅れやコスト増加が生じています。こうした状況は、建設需要が拡大する中で今後も続くとみられますので、引き続き最新の動向をお届けしてまいります。
ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

