Vingroup(ビングループ)の建設子会社であるVinCons(ビンコンス)は、全国の大規模プロジェクトを対象に、最大100,000人の建設労働者を採用する計画を公表しました。これは同社にとって過去最大規模の採用であり、スマートシティ、工業団地、複合型開発など、総投資額が数十億米ドル規模に及ぶ案件への対応を見据えた動きとされています。
一方、建設業界では人手不足が慢性化し、企業間での採用競争や人件費の上昇が課題となっています。
本記事では、VinConsによる10万人採用計画の概要とともに、建設業界で進む人材争奪の実態や大手建設会社の人員規模を紹介します。

VinConsの建設労働者10万人採用計画
過去最大規模となる全国一斉採用
Nguoi Quan Satの2025年12月10日付記事によると、Vingroup(ビングループ)の建設子会社であるVinCons(ビンコンス)は、2025年12月10日、全国の大規模プロジェクト向けに建設労働者100,000人を採用する計画を公表しました。これは同社にとって過去最大規模の採用であり、専門性を備えた総合建設請負企業としての新たな段階を示す動きとされています。採用された労働力は、北部から南部にかけて展開される以下のような大規模案件に投入される計画です。
- スマートシティ開発
- 工業団地プロジェクト
- 複合型大規模開発
- 総投資額が数十億米ドル規模に及ぶ全国案件
職種・勤務地と他社との規模比較
募集職種は建設現場の幅広い技能職に及んでいます。具体的には、以下のような職種が含まれています。
- 建築・左官、タイル施工、塗装
- 鉄筋、コンクリート、石膏工事
- 電気設備、給排水設備
- 防火設備、空調・換気設備
- 溶接作業
勤務地は、ハノイ、フンイエン、ハイフォン、クアンニン、ハティン、ダナン、カインホア、ホーチミン市、タイニンなど、全国の複数省市にわたっています。また、100,000人という採用規模は、主要建設企業と比較しても突出しており、
- Coteccons:従業員数約3,200人(2025年第3四半期末時点)の約30倍
- Hoa Binh Construction Group:従業員数約1,262人(2024年報告)の約80倍
に相当するとされています。
資本力と大型プロジェクトの実績
VinConsは2018年2月28日に設立され、本社はハノイ市ザーラム区のTechnoPark Towerに所在しています。主な事業分野は投資、建設、不動産開発であり、2024年半ばには資本金を1000億VNDから1兆VNDへ増資しました。株主構成については、Vingroupが議決権の100%、経済的利益の73.5%を保有しています。同社はこれまでに、VingroupおよびVinhomes関連の以下の大型案件を手掛けてきました。
- Vinhomes Ocean Park 1
- Vinhomes Ocean Park 2
- Vinhomes Ocean Park 3
- Vinhomes Smart City
- Vinhomes Royal Island
さらに2024年には、Vingroupとの間で総合請負契約を締結し、
- 投資額約180億米ドル、面積4,100ha超の「Ha Long Xanh」プロジェクト
- 投資額約24億米ドル、面積877haの「Vu Yen」プロジェクト
を受注しています。VinConsは、2025年から2030年の発展戦略として、国内有数の近代的かつ専門的な総合建設会社となることを目標に掲げ、将来的にはアジアの大手建設企業と並ぶ地位を目指していると伝えています。
建設業界の人材不足と大手各社の人員規模
求人増加と応募減少が示す需給ギャップ
Kinh Te Chung Khoan紙の2025年12月12日付記事によると、Vingroupが大規模な採用計画を打ち出す以前から、建設業界では人手不足が続いていましたが、企業によって人員の規模や下請けへの依存度には大きな差が生じていました。
ベトナム建設請負業者協会(VACC)は、2025年第2四半期における人材需給の状況について、次の数値を示しています。
- 求人件数:前年同期比172%増
- 応募件数:前年同期比42.5%減
この需給ギャップにより、工期の遅延、人件費の上昇、施工チェーンの維持に大きな負荷が生じているとされています。業界全体では、
- 年間に必要な追加労働力:40万~50万人
- 2030年時点の想定総労働人口:1,200万~1,300万人
- 現在の労働力のうち、短期・未訓練労働者の割合:約75%
とされており、構造的な人材不足が続いている状況です。
大手建設会社における人員規模の実態
また、主要建設企業の人員状況は以下の通りです。
Coteccons
- 2025年旧正月関連プロジェクト期間中、現場稼働人員:30,000人超
- 2025年9月末時点の直接雇用者数:3,218人
- 多くは下請け業者経由の労働力
Hoa Binh Construction Group
- 2019年末時点の人員規模:約31,500人
- 下請け作業員:24,300人
- 間接部門従業員:3,463人
- 正社員作業員:3,722人
- 2024年末時点:1,262人まで減少
Newtecons
- 現在の稼働人員:約15,000人
- 新規プロジェクト対応に必要な追加人員:少なくとも5,000人
UDIC
- 現在の稼働人員:約10,000人
- 今後の業務量見込み:1.5~2倍
Vinaconex
- 2024年末時点の人員数:7,293人
- うち半数以上が短期雇用労働者
VinConsを含めた資本規模の比較
こうした慢性的な人材不足の中で、VinConsが最大100,000人の作業員を採用する計画を公表し、建設業界で大きな注目を集めました。
計画が全面的に実施された場合、VinConsの労働力規模は、旧正月向け建設プログラム期間中に3万人超が現場で稼働したCotecconsや、Newtecons、UDIC、Vinaconexを大きく上回り、国内最大規模の建設会社となる見通しです。
あわせて、主要各社の資本金規模は以下の通りとなっています。
- VinCons:2024年7月に資本金を1,000億ドンから1兆ドンへ増資
- Coteccons:1兆360億ドン
- Newtecons:1兆5,090億ドン
- Hoa Binh Construction Group:3兆4,720億ドン
- UDIC:4兆3,000億ドン
- Vinaconex:6兆4,650億ドン
これらの数値から、VinConsの資本金規模は同業大手と比べて低いものの、同社が資本規模以上に人員体制の急拡大と施工能力の強化を重視していると説明されています。
建設業界で深刻化する人材不足
仕事量の急増と受注環境の変化
VnEconomy紙の2025年11月9日付記事によると、ベトナムの多くの建設請負企業では、現在および2026年にかけて仕事量が最大50%増加すると見込まれています。しかし、2025年第2四半期以降、建設業界では深刻な労働力不足が続いており、受注行動にも影響が出ています。
11月8日にベトナム建設請負業協会(VACC)が開催した「2025年第4四半期カフェ・ニャータウ」では、すでに過去に締結した契約で2026年分までの仕事量が確保されており、これ以上受注すると人員が不足するため、新規案件を断っている企業があることが共有されました。
Newteconsの経営責任者は、同社の仕事量が2025年に約50%増加しているとしたうえで、現在約15,000人の労働者を抱えているものの、今後の案件をこなすには少なくとも5,000人以上の追加人員が必要になると述べています。また、直近2四半期では、大規模な投資家が従来の入札方式ではなく、建設会社を指名して発注するケースが増えており、大手案件を優先すると、これまで対応してきた中小規模の案件を十分にこなせなくなる懸念があると説明しています。
採用難と人材の質に対する各社の指摘
各社のコメントでは、人材確保の難しさが具体的に語られています。
Xuan Mai社の副社長は、技術者の採用が非常に難しい状況にあるとし、近年の新卒者については、生産性、実務スキル、労働に対する姿勢のいずれの面でも課題があると指摘しています。さらに、採用後に教育や研修を実施しても、研修期間中に収入が得られないことを理由に離職するケースがあり、研修後もより高い賃金を提示する企業に移ってしまうため、人材を定着させることが難しいと述べています。
Visiconsの最高経営責任者は、国内企業に加えて外資系企業も労働者を求めていることから、賃金をめぐる競争が激化し、建設業界の労働市場が非常に厳しい状況にあると説明しています。同社では、人材を確保・定着させるため、賃金水準だけでなく、住環境や生活条件の整備にも特に配慮し、労働者が自宅で生活する場合と同程度の生活水準を維持できるよう努めているとしています。
賃金上昇と外資系企業の要求水準
人材不足を背景に、賃金水準も大きく上昇しています。一部の大手建設企業では、建設労働者に対し日給1,000,000~1,500,000VNDを提示する採用方針を打ち出しており、これは地方当局が公表する人件費や、一般的な建設企業が支払う賃金水準を大きく上回るものです。
また、Visiconsの経営責任者は、大手外資系企業の発注姿勢について、ベトナム企業に施工や製造を委託する前に、工場設備だけでなく、労働者の宿舎や生活環境まで現地で確認し、基準を満たした場合にのみ発注する傾向があると説明しています。こうした要求の高まりは、建設企業にとって人材確保と労働環境整備の両面で負担を増やしているとされています。
省人化と技術導入をめぐる具体策
人材不足への対応策として、UDICの副社長は、同社が現在約10,000人の労働者を抱えているものの、今後の仕事量は1.5~2倍に増加する見通しであり、現行の人員では対応できないと説明しています。一方で、海外からの労働力確保は、賃金面で折り合いがつかず難しいとしています。
そのうえで、中国の建設業界の事例を参考に、ロボットを活用して建設、左官、塗装、仕上げなどの工程を自動化し、労働集約型の構造を見直す必要があると述べています。
これらの意見を踏まえ、VACCの会長は、各企業が技術革新を進めて必要な人員を減らすとともに、業界として韓国、日本、中国などの事例を調査・共有し、その成果を政府や国会に提言する方針を示しました。また、建設業界全体として、教育、賃金、労働環境の見直しを通じて、生産性向上と人材確保を両立させる必要があるとされています。
おわりに
VinConsによる建設労働者10万人規模の採用計画は、同社の事業拡大戦略を示すと同時に、ベトナム建設業界が直面する深刻な人材不足を象徴する動きとも言えます。各社の事例や業界団体のデータからは、仕事量の増加に対して労働力の確保が追いついておらず、採用競争の激化や賃金上昇、労働環境整備への対応が避けられない状況となっています。今後は、人員確保だけでなく、教育・定着策や省人化・技術導入を含めた中長期的な対応が、建設企業の競争力を左右する重要な要素となりそうです。
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