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海外経験を活かせるか? ベトナム帰国後の起業成功例と職場復帰の壁

地方の工場で笑顔の男性と都市オフィスで思案する男性を対比したイラスト

ベトナムでは2024年、海外へ派遣された労働者数は15万人以上となりました。技能と資金を蓄えて帰国し、地方で起業して雇用を創出する成功例がある一方、ベトナム国内の企業に復職しても給与水準や職場文化の違いに直面し早期離職する事例も少なくありません。本記事では、海外経験を活用して地元で事業を軌道に乗せた労働者の姿と、国内企業で定着が難しい現状という対照的な二つの実態を整理します。

目次

海外経験を地元経済に還流させる動き

町工場を興して地域産業を底上げ

ベトナム労働新聞((Nguoi Lao Dong))の2025年6月6日付記事によると、中部地方出身の男性は大阪の機械工場で技能実習後、エンジニアとして数年間勤務し、十分な資金と知識を得て帰国しました。地元で農具や小型農業機械を製造する工場を立ち上げ、高い品質で近隣省からの受注を拡大しています。現在は十数名の地元住民を雇用し、若者に無償で技能指導を行うことで地域の人材育成にも寄与しています。

日本の食文化を都市に根付かせる挑戦

南部出身の料理人は仙台で培った調理技術を生かし、ホーチミン市へ戻って市場調査を実施。牛タン丼を看板に掲げる小規模店を開業し、親しみやすい価格と丁寧な接客で評判を呼びました。現在はカレーとラーメンを扱う二号店も運営し、日越両国の食文化を橋渡しする役割を果たしています。

日本式介護モデルを地方に導入

神奈川県の介護施設で五年間働いた中部出身の女性は、帰国後フエ市に高齢者ケアセンターを開設しました。日本式のケア手法を取り入れたサービスは地域で注目を集め、高齢化が進む国内市場での成長が期待されています。

欧州で学んだ観光経営を国内に応用

スイスの専門学校で観光を学んだ首都圏出身の男性はホーチミン市に旅行会社を設立し、欧州式の経営管理を導入しました。細部までこだわるツアー設計と人材育成を徹底した結果、厳しいコロナ禍でも事業を維持し、高付加価値の体験型ツアーを提供しています。

行って帰る──若年層に浸透する二段階戦略

近年の若年層は「海外で技能と資金を蓄え、一定期間で帰国し起業する」という二段階戦略を描くケースが増えています。この流れは地方から都市部まで高品質な製造・サービス業を誕生させ、輸出労働を「出稼ぎ」から「知識と技能の逆輸入」へ転換する原動力となっています。

国内企業復帰が抱える現実的な壁

一方、ザンチー紙(Dan Tri)の2025年5月17日付記事によると、帰国してベトナム国内の企業に復職しても、給与水準や職場文化の違いに馴染めないケースもあります。

給与格差や職場文化の違いによる早期離職

北部出身の男性は日本での月収が3,000〜4,000万ドン相当だったのに対し、帰国後にホーチミン市の日系製造企業で提示された月給は約1,200万ドンにとどまりました。また、なかなか仕事を任せてもらえないこともあり、収入差や権限の不在を理由に短期間で退職し、不動産業界へ転身しています。

採用側も抱える定着難の悩み

ハノイ郊外の工業団地にある日系企業では、帰国者を管理職として五人採用したものの、わずか一か月で全員が離職しました。「いくら昇給しても海外勤務時の水準に届かないこと」が主因だと採用担当者は述べています。

統計が示すミスマッチの実態

2025年4月末までに海外就労へ新たに出国した労働者は4万7,881人と年間計画の36.8%を達成しましたが、JICA(国際協力機構)の調査によれば帰国後に専門分野で就職できた人は26.7%に過ぎません。ベトナム経済政策研究所(VEPR)の調査でも、帰国者の60%以上が海外での専門性と無関係な職に就いている実態が明らかになっています。

専門家が指摘する解決策

求められる現実的なアプローチ

社会生活研究所の所長によると、企業が能力評価を透明化し、昇進の条件を明示することで帰国者のモチベーション維持につながると提言しています。同時に、労働者自身も初年度は控えめな給与から実績を示し、段階的に交渉する姿勢が望ましいとされています。これにより期待値と現実のギャップを縮小し、長期的なキャリア形成が可能になると分析しています。

公的支援が果たす役割

帰国後に起業する上で、ベトナム国内市場に関する知識不足、財務管理や事業運営の経験不足などが障壁になりやすいため、ホーチミン市に拠点を置く研究機関の専門家は、財務・人事・マーケティングなどの講座を公的機関が整備することを提案しています。

おわりに

海外就労経験者が地方で起業し、地域経済の活性化に寄与する一方で、国内企業への復職においては給与格差や職場文化の違いが定着を阻む要因となっています。今後は、こうした海外で蓄積された技能と知識を国内で十分に活かすための制度整備と、企業・労働者双方の歩み寄りが期待されます。

ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

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