ベトナムでは、外国人労働者が企業で就労する場合に労働許可証(ワークパーミット)の取得が必要です。しかし、書類準備も含めて申請手続きには数ヶ月を要することがあるため、申請スケジュールの全体像を把握しておくことが、スムーズな就労開始のための重要なポイントとなります。
本記事では、
- ベトナムで就労する外国人労働者に関する政令第152/2020/ND-CP号
- その一部を改正した政令第70/2023/ND-CP号(以下、政令第70号)
これらをもとに、労働許可証申請の全体的な流れと改正後の運用状況について整理します。

現時点の労働許可証申請に必要なステップ
2024年1月1日より前の申請手順
2024年1月1日より前は、以下の2ステップでした。
・就労開始予定日の30日前までに提出
・申請後10営業日以内に結果通知
・就労開始予定日の15日前までに提出
・申請後5営業日以内に結果通知
2024年1月1日以降の申請手順(政令第70号)
2024年1月1日以降は、政令第70号に基づき、下記の3ステップに拡張されました。
・雇用サービスセンターなどのWebポータルに少なくとも15日間掲載
・就労開始予定日の15日前までに提出
・申請後10営業日以内に結果通知
・就労開始予定日の15日前までに提出
・申請後5営業日以内に結果通知
申請期間の目安
上記各ステップの間には、書類の準備期間も必要です。さらに、管轄機関によっては法令通りの期間で結果を得られないケースもあります。また、申請後に書類の再提出を求められることがあれば、さらに時間がかかります。
これらを踏まえると、全体で3〜4ヶ月程度を見積もっておくと、就労開始予定日に間に合わせられる可能性が高くなります。
募集通知の運用実態
政令第70号により募集通知(求人掲載)のプロセスが加わったため、手続きの負担は増えています。しかし、実際の運用状況を見ると、次のようなデータが報じられています。
【日本語仮訳】
2024年1月1日から同年12月30日までの間に、ホーチミン市雇用サービスセンターは 7,674社 から、外国人労働者の採用を予定するポジションに対してベトナム人労働者を募集する旨の通知を受理し、合計22,513件 の求人を登録しました。募集された職位は、管理職・専門家・技術者で、平均月給は4,500万ドンでした。
同期間にこれらの求人に対し、ベトナム人労働者からの応募・問い合わせは 2,947件 ありましたが、現在まで採用に至った者は一人もいません。
外国人労働者採用プロセスの調整に関する提案|ザンチー紙(Dân Trí)- 2025年1月5日
【日本語仮訳】
ホーチミン市内務局所管のホーチミン市雇用サービスセンターの業務報告によれば、2025年1月1日〜4月30日 の期間に、同センターは 1,804社 から、政府政令70/2023に基づき外国人労働者を充てる予定のポジションについて、ベトナム人を募集する通知を受理し、計8,149件 の求人を登録しました。2025年4月30日時点で、そのうち 993件 は掲載開始から15日以内の掲出期間中にあ離ました。募集職位の大半は管理職・専門家・技術者で、平均月給は約5,000万ドン(約26万円相当)でした。
同センターのフォローアップによると、これら求人に対して ベトナム人労働者からの応募・エントリーは1,488件 あったが、採用に至った事例は一人も確認されていません。
月給5000万ドンの求人が8000件以上あるが、ベトナム人候補者は選ばれていない|タインニエン紙(Thanh Niên)- 2025年5月9日
外資系企業の幹部クラスや専門家ポジションは、事実上「外国人限定」となることが多いにもかかわらず、規定によりベトナム人を15日間募る手続きが義務付けられているため、企業にとってはコストと手間が増えるだけと感じられるケースが多いのが現状です。そのため、本規制の在り方については議論の対象にもなっています。
一方で、以下のように手続き短縮に向けた動きも出ているため、今後さらなる改正が行われる可能性があります。


おわりに
2024年1月以降、ベトナムでの外国人採用プロセスは「募集通知(求人掲載) → 外国人雇用枠申請 → 労働許可証申請」の3ステップに変わりました。しかし、運用実態としては、ベトナム人の雇用につながっていない状況も多く報告されています。
最新の申請スケジュールを踏まえながら、実際の手続きに着手される際は、最新情報を都度ご確認ください。制度や運用ルールは今後も変更される可能性があるため、適切な準備を行うことが重要です。
ビザ・労働許可証に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は、公開時点の情報を参考に作成しており、今後変更となる可能性があります。また、具体的な運用は管轄機関によって異なる可能性があるため、実務上は事前にご確認をお願いいたします。

