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Z世代の採用難とベトナム製造業の課題

工場のロボットアームと歩く若い世代のグループ

ベトナムの労働市場では、1997年から2012年生まれの「Gen Z(Z世代)」が労働力人口に占める割合が増加しています。ベトナム統計総局のデータによると、2025年にはこの世代が国内労働力人口の約3分の1を構成すると見込まれており、今後の労働市場に大きな影響を与えるとされています。しかし、現状ではこの世代が製造業に関心を示さず、多くの工場が人材不足に直面しています。本記事では、現地企業の事例や調査データをもとに、製造業とGen Zの間にあるギャップと課題を整理します。

目次

製造業の人材不足とGen Zの関心低下

VNEXPRESS紙の2024年4月17日付記事によると、ホーチミン市クチ地区の外資系縫製企業「Oasis社」は、2024年の旧正月以降、多数の新規受注を獲得し、注文管理スタッフの追加採用を急いでいました。同社は英語でのコミュニケーション能力を求めつつも、未経験者も歓迎し、新卒者には月給1,300万〜1,400万VNDを提示しています。また、都市部からの通勤支援として送迎バスや、工場近くに社員寮も用意しています。

求人情報はオンライン求人サイトやSNSを通じて全国に広く発信されましたが、応募者数は期待を下回る結果でした。特に1997年以降生まれのGen Z世代へのリーチは限定的であり、採用活動は難航しています。

Oasis社では、服装規定の緩和、1~2年後の昇進プランの提示など、従来にない福利厚生を導入して若年層に訴求していますが、それでも適任者の確保には至っていません。同社の担当者は「製造業界全体が若年層の補充を急務としている」と危機感を示しています。

働き方の違いと価値観のギャップ

Gen Zが好む業種と職種の傾向

人材調査会社Anphabeによる2023年の調査では、Gen Zの約1万4,000人を対象に職業選択の傾向を分析しました。その結果、同世代が好む業種は「飲食・ホスピタリティ」「金融サービス」「小売・卸売・商業」などであり、製造業はトップ10から外れていることが明らかになりました。

Gen Zが具体的に選好する職種は、販売、マーケット開発、会計・財務、投資、カスタマーサービスなどで、柔軟な働き方が可能な分野が中心です。

製造業とのミスマッチの要因

この調査結果は、製造業が直面する現実を反映しています。多くの工場では、シフト制勤務や土曜日出勤、緊急受注時の残業など、時間的な柔軟性が乏しく、Gen Zが重視する「ワークライフバランス」との乖離が大きいと指摘されています。

長年にわたり多業種の企業で人事を担当してきたある人事責任者は、「製造業は生産性向上やコスト競争力の維持が求められるため、企業側は安定した人材を求めているが、若年層の定着率は極めて低い」と述べています。実際、Anphabeの調査ではGen Zの平均在職期間がわずか2.2年であることが示されており、企業にとって人材の長期確保は難題となっています。

この人事責任者はさらに、「工場の勤務体系や厳格な規律は、外見的な華やかさに欠けるため、柔軟で自由な働き方を好むGen Zには魅力的に映らない」とも述べています。

企業と政府の対応策:課題と展望

経済成長への影響と政府の目標

製造業における人材不足は、ベトナムの経済成長戦略にも影響を及ぼしかねません。政府は2025年までに工業・建設分野のGDP構成比を43〜44%、2035年には40〜41%とする目標を掲げています。また、高付加価値産業の割合を2025年までに総GDPの約45%、その後50%超に引き上げる計画です。しかし、この目標達成には若年層の労働力確保が重要となります。

教育と職場環境の見直し

社会生活研究所の所長は、「Gen Zの価値観と製造業特有の厳格な労働環境との間にギャップがあり、これが深刻な人材不足を引き起こしている」と指摘。これに対応するためには、教育・職業訓練を戦略的に展開し、若年層が製造業に関心を持つよう促すことが重要だと強調しています。

柔軟性と育成の重要性

人材調査会社AnphabeのCEOは、「Gen Zは柔軟性を重視し、個人のニーズに敏感で、成長志向とオープンな思考を持つ世代です」と分析したうえで、次のように述べています。
Gen Zは決して遠い存在ではありません。管理職世代にとっては自分たちの子ども世代でもあり、親としての忍耐と育成の視点が採用・定着のカギになります。」

さらに、企業は従来の規律重視の労働慣行を一部見直し、次のような施策の導入を検討すべきだとしています。

  • 工場併設の寮や送迎サービスの提供(特に都市部外の若年層に有効)
  • 一部職種でのリモートワーク導入
  • 出退勤時間の柔軟化
  • 福利厚生の充実

多様な意見と現場の声

ホーチミン市法律新聞の2024年5月3日付記事によると、現場からは、Gen Zと製造業の相性についてさまざまな意見が挙がっています。

ある注文管理担当者は、「自分が勤めるバッグ輸出会社では、管理職の多くが年配で、Gen Zとの世代間ギャップが大きく、意思疎通が難しい」と指摘。また、「製造現場は規則が多く、柔軟性がなく、創造性を重視するGen Zには馴染みにくい」とも語っています。

別の意見では、「工場が市内中心部から遠く通勤が不便なこと、時間に厳格な勤務体制が若者に敬遠されている」とされ、「高い給与だけでは若年層を惹きつけ、定着させることは難しい。企業文化や福利厚生の見直しが必要だ」との提言もありました。

一方で、Gen Zに対して批判的な声もあります。ある読者は「Gen Zは生活基盤が安定しており、厳しい仕事を避けがちで、忍耐力が足りない」と述べ、別の読者は「この世代は自分のスタイルを優先し、作業服を嫌がるなど工場勤務に向いていない」とコメントしています。

また、「現場では35歳を超えると高齢と見なされがちだが、経験豊富な中高年層をもっと活用すべきだ」との意見も寄せられ、多世代を組み合わせた人材戦略の必要性が指摘されています。

おわりに

ベトナムの労働市場で存在感を増すGen Zは、製造業にとって大きな課題であり、新たな可能性でもあります。従来の労働環境だけでは、この世代の価値観に十分応えることが難しくなっており、次世代の労働者とどう向き合うかが、持続的な成長を支える要素になると考えられます。

ベトナムの人事に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

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