2025年に入り、ホーチミン市や南部主要省に加え、北部の電子産業集積地・バクザン省でも、大手企業による求人需要が急速に拡大しています。本記事では、南部での採用需要の高まりや、北部で進む大規模採用の動き、さらにFoxconn・Luxshareといった外資系大手による採用施策を整理してご紹介します。


全国規模で拡大する求人需要
ホーチミン市の求人イベント
ベトナム労働新聞の2025年4月28日付記事によると、ホーチミン市では大規模な求人イベントが開催され、約10,000件の求人枠が提示されました。企業の多くは新卒者や転職希望者の確保を目指しており、銀行・営業・会計から、機械、電気・電子、ホテル・レストラン、そして一般作業員まで、幅広い職種が対象となっています。ホーチミン市では2025年第2四半期に約80,000人の採用需要が見込まれています。
南部主要省でも広がる採用活動
ホーチミン市に隣接するドンナイ省では、2025年初頭から4月中旬までに約500社が24,000人以上の労働者募集を登録し、その多くが一般作業員向けです。しかし実際の採用に至ったのは20〜30%程度にとどまり、企業と求職者のマッチングが課題となっています。
ロンアン省では、2025年4月中旬時点で、繊維、電子部品、プラスチック、家具、飼料、環境処理などの分野において3,500人以上の採用が必要とされており、製造オペレーターやミシン工、機械制御技術者、品質管理、事務職や生産管理職など、多様な職種で人材が求められています。
北部で加速する大規模採用
北部では、バクザン省において大手電子機器メーカーによる採用活動が加速しています。Foxconn Vietnam(台湾・鴻海グループ)は第1四半期だけで22,000人の採用(約250人/日)を見込み、Luxshare-ICTも40,000人の募集を発表しているため、2社で約60,000人ということになります。
Foxconn Viet Namの副社長によると、2024年の同社ベトナム事業の売上が70%以上増加し、2025年はさらに50%の成長を目指しているとコメント。現在、国内5つの省・市で10件以上の大規模プロジェクトを進行中であり、それに伴う人材需要が急増していると述べています。
採用難の背景と企業間競争の激化
企業の求人活動が活発化する一方で、特に一般作業員の確保に苦戦しているといいます。その背景にはまず、月給700万ドン以下の募集が全体の約60%を占めており、これは現在の物価上昇を考えると、魅力的とは言えません。また、多くの省が工業団地を誘致・整備しているため、地元で仕事をするという選択肢が広がっており、都市部への労働者の移動が減少傾向にあることも一因です。
電子機器業界で進む人材獲得競争
VnExpress紙の2025年2月19日付記事によると、2025年初頭、ベトナム北部のバクザン省では、電子機器製造業を中心に人材獲得競争が起きていました。特にFoxconn(フォックスコン)とLuxshare(ラックスシェア)といった大手外資系企業が、入社ボーナスや福利厚生を武器に採用施策を打ち出しています。
Foxconn:即効性重視の採用インセンティブ
基本給は据え置き、即戦力獲得のための「入社ボーナス」
Foxconnのバクザン工場は、2025年2月中旬から新規採用の一般作業員に対して、700万ドンの入社ボーナスを3か月に分けて支給する制度を導入しました。この金額は基本給(510万ドン)の約1.4倍に相当し、通常の月収900〜1,200万ドンに比べて、1,400〜1,500万ドンにまで上昇することになります。なお、基本給および手当(250〜280万ドン)は従来水準を維持したままで、ボーナスによる差別化が図られています。
社員紹介制度の強化と報酬増額
既存社員によるリファラル制度も強化され、紹介成功時のボーナスは従来の300〜400万ドンから600万ドンへと増額されました。これは当時のバクザン省内で最も高額な紹介ボーナスとされており、社内からの採用協力体制を促進しています。
1日1,000名応募を可能にした多様な応募チャネル
こうした施策の結果、Foxconnでは毎日約1,000名の応募があり、そのうち約400名が面接に進み、85%が一般作業員だと報じられています。応募チャネルもSNSなど多岐にわたります。
短期集中型の施策と時期限定の戦略
今回のボーナス制度は、2025年2月の新年後の採用ピーク期に限定されたものであり、Foxconnでは年間を通じて時期に応じた柔軟な採用施策を展開していく方針です。特に9〜10月の繁忙期や新ライン立ち上げ時などに再び特別施策が打ち出される可能性があります。
Luxshare:福利厚生で差別化する採用戦略
Foxconnに対抗する形で「入社ボーナス」
Foxconnのバクザン工場が入社ボーナスを700万ドンに引き上げたことで、周囲の企業も対応を迫られる中、Luxshare-ICTでは、2月に自主的に応募してきた労働者に対して100万ドンのボーナスを支給し、さらに2か月勤務を終えた後に200万ドンを追加支給しています。
自社寮・食費手当など住環境と生活支援の提供
Luxshare-ICTでは、残業を行う従業員に対して毎月117万ドンの食事手当を支給しており、食事を取らなかった分は現金に換算して給与と一緒に支払われます。また、遠方からの労働者に向けては、電気・水道代が不要で、設備も充実した会社の寮を提供。社員が家賃として毎月150万〜200万ドンを支払うことなく住むことができるため、生活コストを抑え、その分を貯金や仕送りに回すことができます。
こうした手当や福利厚生を含めた工場労働者の月収はおおよそ900万〜1,200万ドンに達し、地域内の他社と比べても見劣りせず、むしろ上回る水準となっています。
子育て世代への追加支援と、技術職への高水準の報酬体系
子育て中の社員には、通常の手当に加えてさらなる福利厚生が用意されており、総額で月2.8〜4百万ドンの手当となります。また、技術職やエンジニアに対しては、より高い収入水準が設定されており、求職者の属性や希望に応じた柔軟な対応が行われています。
社内ストリーマーによる情報発信と採用チャネルの拡大
Luxshare-ICTは、採用活動を強化するため、自社の人材を“社内ストリーマー”として育成し、SNSを通じて企業の方針や職場文化を広く発信しています。これらの社員は、親会社のある中国で最低3ヶ月間の研修を受けた上で、本社の魅力や職場のリアルな様子を届け、求職者との信頼構築に貢献しています。
成長するバクザン省の人材戦略
採用チャネルの多様化と地方との連携
出張説明会や学校訪問を通じた人材掘り起こし
2024年初頭、採用難が深刻化する中で、バクザン省の指導部は企業と連携し、8つの省や大学を訪問する出張団を組織。労働者や学生と直接面会し、地元企業への就業を呼びかけるなど、若年層への積極的なアプローチが行われました。
地域ラジオ放送を活用した広報と即戦力採用
年末には、バクザン省内の192のコミューンのラジオ局と連携し、1日2回、緊急で5,000人の労働者を必要とする企業の求人情報を放送。15日間にわたり集中的に運用され、企業の即戦力確保を支援しました。
長期的人材戦略と人材育成の必要性
バクザン省の経済成長と人材需要の加速
2017年から2024年にかけて、バクザン省の経済成長率は年平均14%と全国トップレベル。経済規模は5年ごとに倍増し、現在は全国第12位に達しています。こうした成長に伴い、人材需要も年々増加しており、特に電子・半導体分野でのニーズが急拡大しています。
企業と教育機関の連携強化とスキルアップ支援
バクザン省の指導部は、採用競争の過熱が一時的なものであることも踏まえ、企業に対して人材確保に加えた人材育成の重要性を訴えています。企業は地元の学校と連携し、高度な技能を持つ労働力の育成を進めており、長期的な人材確保に向けた職場環境や待遇制度の整備も求められています。
おわりに
物価上昇や地方の工業団地の発展により、企業が労働者を都市部へ呼び込む難易度は増しています。そのなかで、即効性のあるインセンティブに加え、生活支援・キャリア形成支援・採用広報の工夫など、企業ごとの戦略の差が鮮明になりつつあります。単なる賃上げ競争だけではなく、働きやすさや成長機会といった“総合的な魅力”が問われる時代。中長期の視点から人材と向き合うことが、ベトナム国内での持続的な採用力強化の鍵となりそうです。
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