ベトナムでは、2024年の改正雇用法草案で学生の労働時間上限を設ける案が検討されましたが、最終的に上限規定は見送られました。
一方、教育訓練省は2025年9月に公表された国会決議案の中で、外国人留学生に週最大20時間の就労を認める提案を初めて盛り込みました。
本記事では、ベトナム人学生と外国人留学生それぞれの労働時間をめぐる議論と提案の動向を、時系列で整理して紹介します。


上限を週20時間とする案:2024年3月
労働時間上限への学生や事業者の声
Tuoi Tre紙の2024年3月26日付記事によると、旧労働・傷病兵・社会省(現内務省)が提出した改正雇用法草案では、学生について学期中に週20時間以内、休暇期間中に週48時間以内の労働を認める方針が初めて盛り込まれていました。
しかし、この案に対しては賛否が分かれています。学生の多くは「収入が減ることで生活が厳しくなる」と懸念し、学校側は「実際に管理するのは困難」との見解を示しています。地方出身のある大学生が生活費を補うために週5~6シフト働いて月3,500,000VNDの収入を得ている実例もあり、学生たちは「学業と仕事を自分で調整している」と述べ、労働時間の一律制限に慎重な意見を示しています。
一方、飲食店や小売業の雇用主は、「学生の労働は自己成長の機会でもある」として柔軟な対応を求めています。ある店舗管理者は「サービス業は繁閑の差があり、固定的な上限では運用が難しい」とし、別の飲食店代表者も「時間制限は学生と雇用主の双方に影響を及ぼす」と指摘しています。
教育現場や専門家の課題認識
教育訓練省の元幹部は、労働時間の上限設定は学生の健康と学業の両立を守るために意義があるとしながらも、「中小企業や飲食業など、多様な形態のアルバイトを実際に管理するのは現実的に難しい」と述べています。
大学側からも同様の懸念が上がっており、ある大学の副学長は「1万3,000人規模の学生を対象に、学外の労働時間まで把握することは不可能に近い」と説明。学生の出席率や学業成績で自己管理を促す仕組みを重視すべきだとしています。
一方、社会生活研究所の准教授は、「この問題は2019年労働法および教育法にも関わるため、制度を導入するにあたっては慎重な検討が必要だ。各法令の間で矛盾や相互の抵触が生じることは避けなければならない。」と警鐘を鳴らしています。
上限を週24時間とする案:2024年8月
週24時間へ引き上げる修正案
VnExpress紙の2024年8月8日付記事によると、旧労働・傷病兵・社会省(現内務省)は、学生の労働時間を週20時間から24時間に引き上げる案を発表しました。これは、3月時点で公表されていた「週20時間以内」という案を修正したものです。
改正案では、15歳以上で正規の教育課程に在籍する学生は、学期中に週24時間を超えて働くことができないと規定されています。また、就労時には労働法の関連規定を遵守する必要があります。さらに、学生の最低賃金を地域別の時給最低額以上とすることも明記されました。
教育機関への報告義務と保護の仕組み
新たな草案では、学生がアルバイトを行う際には所属教育機関への報告を義務付け、学校側が学業への影響を監督・支援する責任を負うと定めていました。
雇用局長によると、この方針は教育訓練省や複数の大学との対話を踏まえて策定されたものであり、「学生が不当な扱いを受けず、法的に保護されるための枠組み」と位置づけられています。また、「週24時間というのは1日あたり平均4時間に相当し、学業との両立に懸念があるという意見も多い」と述べ、今後も慎重に意見を取り入れて修正を進める方針を示しました。
学生の就労実態と背景
現行の労働法では、一般労働者の勤務時間を「1日8時間・週48時間以内」と定めています。したがって、新たな草案において学生に認められる労働時間は一般労働者の半分程度にあたります。
全国規模の統計はまだ存在しないものの、各大学の調査によると、学生の約70〜80%が生活費や学費を補うためにアルバイトをしていると推定されています。主な仕事は、飲食店やカフェでの勤務、商品の梱包、チラシ配布などで、時給は17,000〜20,000VND、1日4〜5時間、週28〜35時間働くケースが一般的とされています。
また、英語、情報技術、自然科学などを教える学生は、より高い報酬を得ることができ、数学教育または初等教育を専攻する学生は、1時間あたり100,000〜200,000ドンの指導料を受け取っています。
労働時間の上限を撤廃へ:2024年9月
時間制限は現実的でなく管理も困難
Dai Doan Ket紙の2024年10月8日付記事によると、国会常務委員会に提出された改正雇用法草案の最新案では、これまで設けられていた学生の労働時間の上限(週24時間)を撤廃する方針が示されました。これにより、法定労働年齢に達している正規課程の学生は、労働法の一般規定に基づいて自由に就労できるようになり、雇用主にも労働法に沿った運用が求められます。
この変更は、2024年6〜7月の意見募集段階で出された「週24時間まで」という案を取り下げる形で行われたもので、多くの意見が「具体的な時間制限は現実的でなく、管理も困難」と指摘していました。
学生の労働時間に関する国際比較
世界を見渡すと、多くの国でも、学生が週20〜24時間の範囲でアルバイトをすることが認められており、イギリス、オーストラリア、アメリカ、フィンランドなどがその例です。アジアでは、日本と韓国の学生もアルバイトをすることが許可されていますが、それぞれ週28時間および25時間を超えてはならないとされています。
ただし、これらの規定は外国人留学生のみに適用され、自国民である学生には設定されていません。これは、居住目的の管理や国内労働者の保護を目的としたものです。
最新の草案で学生の労働時間の上限を撤廃することは現実に即しており、また、学生が授業の学習に影響を与えることなくアルバイトができるよう、時間の使い方における主体性を高めるものとされています。
留学生の労働時間上限の提案:2025年9月
外国人留学生の労働時間上限を初めて設定
VnExpress紙の2025年9月26日付記事によると、ベトナム教育訓練省は、外国人留学生に週最大20時間の就労を認める方針を示しています。これは、9月26日に公表された「教育・訓練分野の発展を促進するための特別政策に関する決議案」の中で初めて明文化された内容です。この新方針は、留学生が生活費を補いながら、ベトナムの文化や職場環境を体験できるようにすることを目的としています。
また、決議案によると、2025年8月7日付の政令第219/2025/NĐ-CP号(外国人労働者に関する政令)第7条第7項において、「ベトナムまたは外国の学校・教育機関で学んでいる外国人の学生であって、ベトナム国内の使用者との間でインターンシップ契約または就労招待状を有する者、およびベトナム籍の船舶で研修・実習を行う研修生。」は、労働許可証の発給対象に該当しない者とされており、手続きも定められています。
しかし、現行法には外国人留学生の労働時間に関する具体的な上限規定が存在しませんでした。
国際的な基準に合わせた週20時間
教育訓練省によれば、週20時間の上限は多くの国で採用されており、国際的な慣行に沿ったものとしています。この方針は、相互主義と公平性の原則に基づき、外国人留学生の受け入れ促進にもつながると説明しています。
2024年末時点で、ベトナムには約22,000人の留学生が在籍しており、過去9年間で最多となりました。そのうち約80%はラオスとカンボジアからの学生が占めています。主な留学先は、ハノイ大学、人文社会科学大学などの語学・文化系学部ですが、近年はハノイ工科大学などの理工系や経済系の分野にも広がっています。
また、教育訓練省はこのほか、博士号を有する外国人専門家や研究者に対し、ベトナムの大学・短大で働く場合に5年間のビザおよび労働許可証を免除する制度も併せて提案しています。
おわりに
学生の労働時間をめぐる議論は、学生にとって学業と生活をどのように両立するかという現実的な課題に関わるものです。ベトナム人学生・外国人留学生の双方で、他国の事例を参考にしながら、それぞれの立場から判断や提案が行われています。また、人手不足の業界においては、学生の労働が一定の役割を果たしている側面もあります。今後も、こうした動向を継続的にお伝えしてまいります。
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