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【2026年1月更新】週48時間から44時間・40時間への移行案、ベトナム労働時間短縮の最新動向

労働時間48hから44hへの短縮を示す天秤のイラスト

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ベトナムでは労働時間の短縮が政策課題として挙げられています。国際基準への適合、公務員と民間の格差是正、労働者の生活の質向上など、さまざまな観点から議論が進められており、国会の討論などでは週48時間から44時間、さらには40時間への段階的移行が提案されています。

本記事では、議論の背景や国際動向、企業の事例をもとに、労働時間短縮の現状と課題を整理します。

目次

労働時間短縮のロードマップ

ベトナム労働新聞の2025年6月18日付記事によると、2025年6月、国会の経済・社会状況に関する討論で、文化社会委員会の専門委員であるファム・チョン・ギア議員は、政府が労働時間短縮のロードマップを早急に国会に提出するよう提案しました。現在の週48時間の労働時間を、2026年に44時間、2030年に40時間へ段階的に短縮する案です。

ギア議員は「人材は自立した経済の鍵となる要素です。制度改革やインフラ整備とともに、国家レベルで人材育成および職業技能開発の戦略を速やかに策定する必要があります。」と述べました。

この提案は2023年末の国会で行われた討論でも議論されていましたが、今回は具体的な実施時期が示された点が異なります。

国際基準とベトナムの現状

VnEconomy紙の2025年6月17日付記事によると、国際労働機関(ILO)の統計では、世界の多くの国が週40時間労働、あるいはそれ以下の労働時間を標準としています。ILOの「労働時間に関する第47号条約」も、労働時間のさらなる短縮を各国に奨励しており、労働者の健康維持や生産性向上につながるとされています。

一方で、ベトナムでは現在、労働法により「通常の労働時間は1日8時間、週48時間まで」と規定されています。国家は週40時間労働の採用を奨励していますが、実際には普及していません。労働生産性が低く、労働者の所得水準も十分ではないため、多くの人が生活費を補うために長時間労働や残業を余儀なくされているのが現状です。

ベトナム労働新聞の2025年7月6日付記事によると、ベトナム労働総連合の幹部は、「中国では国民の平均所得が年間2,500米ドルに達した時点で週40時間労働を実施したが、ベトナムはすでにこの水準を超えているにもかかわらず、まだ週48時間労働を続けている」と指摘しています。

公務員と民間労働者の格差

ホーチミン市の労働組合幹部は、公務員(1999年から週40時間労働を適用)と民間企業の労働者との間に公平性をもたらすために、労働時間短縮が必要であると認識していました。

現在、公務員は土曜日と日曜日の2日間が週末休暇とされていますが、民間企業の労働者は土曜日も通常勤務日とされ、代休も設けられていません。そのため、祝日や休日の日数にも差が生じています。

また、ベトナム労働総連盟はこれまでにもこの問題を繰り返し取り上げており、全国規模の調査を通じて長時間労働が労働者の生活や健康に悪影響を与えていると報告しています。

実際に労働時間を短縮した企業の事例

一部の企業では、すでに労働時間短縮を導入し、労働環境の改善に取り組んでいます。

ホーチミン市に拠点を置くAn Thien製薬株式会社は、2016年に工場を労働者の居住地から離れた場所に建設した際、長距離通勤による疲労を軽減するために週44時間労働を導入しました。当初は毎週土曜日を半日勤務、日曜日を全休としましたが、長い通勤時間のため半日の休暇では十分な休息にならないという課題がありました。

このため、労働組合の提案により、月に少なくとも2回の土曜日を全休とする柔軟な勤務制度が採用され、月に2回以上の完全週末休暇が実現しました。労働組合長は「企業が労働時間を短縮し、なおかつ収入を維持できれば、労働者の支持は非常に大きい」と語り、同社が残業依存から脱却するために生産性向上への投資を進めていることを強調しています。

労働者の期待と不安

労働時間短縮は多くの労働者から歓迎されていますが、同時に不安も存在します。ホーチミン市のある縫製工は次のように述べました。

「現在6日間勤務で1日8〜10時間働いており、繁忙期には残業時間がさらに増えます。もし週44時間や40時間労働になれば、生活は楽になると思いますが、収入が減るのではと心配です。」

また、労働時間が短縮された場合に備えて補助政策が必要であり、地域別最低賃金が調整されれば、労働者はより安心して休息できると期待を示しました。

労働時間短縮実現に向けた課題と展望

労働時間短縮を実現するためには、単なる時間削減だけではなく、経済全体の持続的成長と労働者の生活向上を両立させるための包括的な改革が求められます。

チャン・ティ・ホン・タイン議員は、ベトナムが新たな経済発展段階に入り、労働生産性、品質、国際競争力が一層求められる中で、政府は労働市場の近代化、持続可能な雇用創出、高品質な人材の育成に注力すべきだと指摘しています。

続けて、現在の労働市場には次のような課題があると述べています。

技能のミスマッチ

ベトナムでは低技能労働者が過剰である一方、高度な技能を持つ技術者やデジタル・環境分野に対応できる人材が深刻に不足しています。これは教育・訓練が産業界のニーズと十分に連携していないことが一因です。

教育訓練の遅れと供給の偏り

近年の統計によれば、学位や資格を持つ訓練済み労働者の割合は約28%に留まり、2025年までに30–35%に引き上げる目標には届いていません。さらに、大学・大学院卒の失業率が低学歴層よりも高いというデータもあり、労働市場の供給と需要の不一致が浮き彫りになっています。

非公式労働の多さと労働市場の分断

労働市場は依然として地域間の連携が弱く、分断されており、労働条件の改善も限定的です。また、非公式労働者(インフォーマル労働)が全労働者の60%以上を占めるなど、安定した雇用の確保が課題です。

これらの課題を踏まえ、「重点的な投資によって高技能人材、デジタル人材、イノベーション人材を育成し、国家レベルの人材開発プログラムを推進すべきです」と述べ、さらに次のような具体的対策を挙げています。

  • 職業訓練システムの改革と柔軟な教育カリキュラムの開発
  • デジタルスキルや環境関連スキルなど高技能人材の育成
  • 労働市場情報システムの近代化と全国レベルのデータベース構築
  • 職業再訓練や技能向上支援、社会保障の拡充

次回の労働法改正に向けた議論

労働法施行5年の評価と検討課題

Nguoi Lao Dong紙の2026年1月15日付記事によると、ベトナム労働総連盟は、2019年労働法の施行から5年が経過したことを踏まえ、その成果と労働者への影響を評価し、今後の修正・補足点を検討するため、2026年1月15日および16日にハノイで会議を開催しました。

2019年労働法は2021年1月1日に施行され、以下のような新たな内容が盛り込まれていました。

  • 労働関係の有無を問わず働く者への適用対象の拡大
  • 労働契約の締結、履行、終了における柔軟性の向上
  • 対話や交渉を通じた賃金決定における当事者の自律性の強化
  • 労働時間、休憩時間、時間外労働に関する規定の柔軟化

一方で、科学技術の急速な発展や国際統合の進展により、労働力や労働関係が変化し、仕事の性質や働き方、労働管理の方法が変わりつつあることから、より柔軟で現代的な労働法制の必要性が指摘されました。

通常労働時間の段階的短縮案

会議では、労働安全衛生分野の学術団体の代表者から、通常の労働時間について以下のような提案が示されました。

  • 現行の週48時間から、段階的に週44時間へ短縮すること
  • 将来的には週40時間まで短縮することを視野に入れること

この提案は、国際的な動向およびベトナムの発展条件に適合させることを目的としています。
また、2019年労働法を改正する際には、実質的な休息権を確保する観点から、

  • 休憩時間や年次有給休暇の取得状況に対する監督の強化
  • 勤務後の回復時間を明確に規定し、労働災害や健康低下を防止すること

が必要であるとされました。労働時間と休息は労働者の権利であり、福利厚生ではないとの認識も示されています。

最低賃金制度を巡る提言

さらに、最低賃金制度についても提言が示されました。

  • 週40時間労働を奨励する場合、月間の最大労働時間は160時間となる
  • 最低賃金月額を160時間で割り、最低賃金の時間給を算定する方式が考えられる

これにより、労働者が生産性や業務の質に見合った賃金を受け取る権利を保護できるとされています。

おわりに

ベトナムの労働時間短縮の議論はこれまでにもありましたが、具体的な移行時期の提案や次回の労働法改正に向けた提案がなされている点で進んできている印象です。とはいえ、労働時間の削減だけで課題が解決するわけではありません。生産性向上や人材育成、社会保障の整備といった複合的な取り組みが求められる中で、今後の政策の具体化が注目されます。

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※本記事は、公開時点の各ニュースソースを参考に、主要なポイントを編集・再構成したものです。概要の紹介を目的としており、最新情報は公式発表などのご確認をお願いいたします。

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